comment総評

2026.06.01第9回キャリアデザインカンファレンス 審査講評

低学年向けキャリアプログラムコースは増加傾向
3年生向けプログラムの「前倒し」は評価に繋がりにくいと示唆

本アワードの選考委員を務める、法政大学キャリアデザイン学部の梅崎 修教授により審査講評が行われた。

第9回は、前半に低学年キャリアプログラムの講評、後半に就業体験コースの講評および総評と、2部構成で行われ、各受賞プログラムの評価内容とインターンシップやキャリアプログラム設計に欠かせないポイントが語られた。

現在、大学1・2年生といった低学年向けのプログラムは増加傾向にある。しかし梅崎教授は、「3年生向けのプログラムをただ1・2年生向けに早期化するだけでは、学生から評価されないと思います。」と指摘する。

特に大学1年生は、大学生活から職業世界への移行期(トランジション)にあり、学生の成長過程にあわせた丁寧なキャリア教育は欠かせない。「特に、大学1年生の時期に、徐々に学業に慣れ、アルバイト経験をし、友人関係を広げていく。その中で、いかに職業世界と触れていくかが課題となっています。」と梅崎教授は述べる。

低学年向けプログラムの好例として評価されたのが、神戸常盤大学の取り組みだ。
大学1・2年生の悩みを正確に把握し、学生一人ひとりの個人差に寄り添う対応を見事に実装できた点が、低学年キャリアデザイン賞受賞の決め手となった。また、学生の学びのプロセスに対し、長期的かつ体系的に伴走する手厚いサポートも高く評価された。

「個々の学生に寄り添うプログラムが選ばれたことを非常にうれしく思っております。今後もこのようなプログラムが評価されることを期待します。今回は教育機関のプログラムのみの受賞となっていますが、企業が行う低学年プログラムというのも発展していってほしいと考えております。」

▼投影資料より抜粋

インターンシップ/仕事体験コース(就業体験型)は体験設計の質が評価を左右
評価プロセスの丁寧さが生き、「納得感」が決め手に

就業体験型のインターンシップ/仕事体験コースも、低学年向けキャリアプログラムコースと同様に、プログラムを体験した学生たち自身の体験との比較やグループディスカッションを行いながら評価を下している。プログラムを通じた学生たちの深い学びと納得感が、スコアにも反映される結果となった。

表彰された各プログラムの評価ポイントについて、梅崎教授は以下のように解説している。

優秀賞は4法人が受賞。
株式会社三好鉄工所のプログラムは、学生にとって理解が難しい「ものづくり産業における分業と協業の流れ」 を、現場体験を通じて十分に理解できる構成が評価された。自己分析や社員との対話に加え、「地域で暮らし、働く」という複眼的な視点が丁寧に設計されている。

能瀬精工株式会社のプログラムは、海外渡航を通じ、グローバル経済の最前線を「ものづくり」の視点から学べる内容となっている。実際の商品や買い手の存在を目の当たりにする学びの新しさと深さが、学生の心を掴んだ。渡航前後のサポートなど、作りこみが丁寧な点も、高い学習効果が生んだと評価された。

コニカミノルタ株式会社は、学生には馴染みが薄い「新規事業の顧客開拓」という難解なテーマに対し、現場で学ぶ5日間のプログラムを実施。複数企業との協力関係(ネットワーク)を構築して設計されており、一朝一夕にはできない作りこみと、学生の理解を助ける工夫が随所に凝らされている。

東京学芸大学、株式会社ラグーンリゾート名護、名護さくら教室で共同実施されたプログラムは、教育学などを学ぶ学生を中心に、沖縄の観光業や子どもたちの教育環境など、複数の地域活動を横断的につなぎ合わせ、複層的に学ぶ画期的な内容であった。大学の学びの再定義・再意味づけを促す、新しいタイプのキャリアデザインプログラムとして高い評価を得た。

文部科学大臣賞を受賞したノートルダム清心女子大学は、「大学での英語の学びが社会でどう役立つか」 を、実体験を通じて理解できるプログラムとなっている。既存のキーワードを借りた、「何となく伝わる」言葉に頼るのではなく、学生同士や社会人との対話の中で、学生自身がゆっくりと言葉を見つけていく「手作りのある言語化」を促す仕組みが高く評価された。

大賞に輝いた株式会社ニトリホールディングスは、留学生向けのインターンシップという社会的意義の大きいプログラムを実施した。自己理解を深めるワークから始まり、実際の店舗実務を通じて、段階的に組織への視座を広げていく構成である。日本人学生向けと同様に、社員交流や個人面談も組み込まれており、日本企業での働き方を「体験する→言葉にする→体験する→言葉にする」というサイクルで丁寧に学べる点が秀逸である。
留学生の来日が増加する中、大企業である同社が本プログラムを開発したことは、自社での開発・実施が難しい企業にとっても有用な先行事例となる、と高く評価された。

梅崎教授は受賞プログラム全体を振り返り、以下のように述べた。

「これらのプログラムというのは、入賞されたものも含めて考えますと、今後のモデルになったり、社会的波及力を持つプログラムに変わってくるのではないかと思います。」

学生の心を動かす「プレイフル」な学びの重要性
絶え間ない「改良・改訂」が学生と社員双方の実りある経験に繋がる

総評として梅崎教授は、大学初年度のプログラムにおいては、学生の焦燥感を煽るのではなく、思わず関心を持つような「遊びでわくわくする(プレイフル)要素」の重要性を強調した。

自身もキャリア教育プログラムのプランナーである梅崎教授は、「1対1で社員と昼食をとる『さし飯体験プログラム』や『職場のおやつイベント』、学生との『丸の内オフィスさんぽ』などを企画しています。低学年の学生には、身近に会社という場を知るという段階があり、その先につなげていくために、プレイフルに学んでほしいと思っています。」と語った。

また、プログラムの質を高める秘訣は、自社の過去のプログラムをすべて捨てるのではなく、「改良・改訂」を繰り返すことにあると述べる。さらに、プログラム実践者同士が交流を持つことで、プログラムの質がさらに向上することも示唆された。

最後に、インターンシップやキャリアデザインプログラムは、「学生のためだけのものではない」という視点も提示された。プログラムに携わる社員自身のモチベーションの向上や、仕事の意味付けの再発見にも繋がるとし、次のように締めくくった。

「インターンやキャリアデザインプログラムは、学生にとってという側面だけでなく、社員にとってのプログラムでもあり、今後はその点にも、もう少し注目していく必要があると考えています。」

▼投影資料より抜粋

    「学生が選ぶ
    キャリアデザインプログラムアワード」
    運営事務局

    MAIL:job-internship-award@mynavi.jp
    job-isaward-gakusei@mynavi.jp(学生用問い合わせ窓口)
    TEL:03-6267-4531(受付時間:平日10:00 - 17:00)