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2020.01.27インターンシップが企業・学生双方の満足度に影響する理由を探る

「2019年度就職採用戦線総括」および「2020年卒マイナビ企業採用活動調査(2019年6月実施)」において、従業員300人未満の中小企業に限定して自己採点が高い企業(※)のインターンシップ実施割合は、自己採点の低い企業の約1.6倍高いことが明らかになりました(図1)。

図1

また、「2020年卒マイナビ学生就職モニター調査(7月の活動状況)」において、入社予定先の満足度を5段階評価で聞いたところ、入社予定先企業のインターンシップに参加した学生の方が、参加していない学生よりも入社予定先への満足度が8.1pt高いことが明らかになっています(図2)。

引用元参考コラム:なぜサマーインターンシップを実施すべきなのか(HUMAN CAPITAL サポネットより)

 

図2

新卒採用において、インターンシップ実施の有無で特に従業員数300人未満の企業において満足度に差があったのはなぜでしょうか。
また、なぜ学生は入社予定先のインターンシップに参加したほうが入社予定先への満足度が高い結果になったのでしょうか。

今回のコラムでは、 「2019年度マイナビ大学生インターンシップ調査(2019年10月実施)」を用いて「インターンシップ内容」と「参加期間」が「インターンシップ後の学生の心境の変化」にどのような影響を及ぼしているかを紐解き、上記問いを考えていきます。

企業調査から見る、インターンシップの今

新卒採用を行う企業では21年卒においてインターンシップを実施する(予定含む)とした企業は55.7%と、5年で1.7倍に増加していますが、企業側でインターンシップの実施率が8割を超えているのは従業員数1,000人以上の企業に限られており、従業員数1,000人未満の企業では、実施率は増加傾向にあるものの、まだ過半数の実施には至っていないのが現状です(2019年度就職採用戦線総括(p.19))。

図3

また、インターンシップの実施期間について、新卒採用を行う企業は21年卒では1日開催が70.5%、2~3日が36.4%、1週間が35.3%と回答しておりました(「マイナビ企業採用活動調査(2019年6月実施)」)。期間別に経年の推移をみると、1日開催のインターンシップは20年卒対象をピークに21年卒では減少し、1週間以上開催のインターンシップは減少傾向に、2~3日開催のインターンシップが増加傾向にある様子が窺えます。企業側のインターンシップ実施期間を決定する際に影響している原因として、「マンパワー不足」、「協力社員の確保が難しい」があると推察されます(「2019年就職採用戦線総括(P.18)」、表1))。

表1

以上より、全体として実施割合は増加傾向であるものの従業員数規模で差があり、実施期間には1日開催と2~3日または1週間以上の開催で倍近い差があることがわかりました。ここから、「インターンシップ内容」と「参加期間」が「インターンシップ後の学生の心境の変化」にどのような影響を及ぼしており、その後の就職活動ならびに採用活動にどのように影響し満足度に関係しうるのかを考えていきます。

学生調査からみる、プログラムと期間の分類

まず、学生が印象に残ったとするインターンシップについて、参加期間とプログラム内容にはどのような組み合わせがあるのか確認します。
「最も印象に残ったインターンシップを実施した企業のインターンシッププログラム内容(複数回答)」と「最も印象に残ったインターンシップを実施した企業のインターンシッププログラムの参加期間(単一回答)」の結果を見てみると、参加期間の長短に関わらず取り入れられているプログラムとしては「グループワーク(企画立案、課題解決、プレゼンなど)」、「人事や社員の講義・レクチャー」、「若手社員との座談会」があり、いずれも期間に関わらず4割はプログラムで取り入れられていることが分かります。
期間によって特徴のある内容としては「実際の現場での仕事体験」、「会社見学・工場見学・職場見学」があり、特に「実際の現場での仕事体験」については参加期間が「1日」と「1週間以上」とでは6倍以上の差があることがわかりました。
仕事体験の内容に関するこの6倍の差の背景には、インターンシップにおける問題点(表1)より、「マンパワー不足」もさることながら「協力社員の確保が難しい」とあるように、社内の協力体制が整っているかどうかも影響していると推察されます。

図4

学生調査からみる、参加期間とインターンシップ後の心境の変化

次に、最も印象に残ったインターンシップを実施した企業のインターンシップのプログラム内容とインターンシップの参加期間について見ていきます。
印象に残ったインターンシップを実施した企業について、期間に関わらず、企業の印象が「よい方向に変化した」と約9割の学生が回答し、また、約7割の学生が「その企業で働きたい」と回答していました(図5)。
本結果を参加期間別にそれぞれ見ると、「1週間以上」の参加期間で企業の印象が「悪い方に変化した」また「その企業で働きたくない」と思う学生の割合が「2~3日」、「1日」よりも高い傾向が見られました(図6)。
仕事を経験する時間が長くなるほど、理想だけではない、より現実に近い仕事の実態を知ることができ、ただの“憧れ”だけで見えていた仕事の“リアル”を知ることにより、心境の変化が起きたのではないかと推察されます。

図5

図6

学生調査からみる、プログラムとインターンシップ後の心境の変化

次に、印象に残ったインターンシップを実施した企業について、参加したプログラムとインターンシップ後の心境の変化を見てみると、「実際の現場での仕事体験」以外のプログラム内容において、「良い方向に変化した」、「その企業で働きたいと思った」割合が高くなりました。
一方で、学生に今後参加したいインターンシップのプログラムを聞くと、「実際の現場での仕事体験」とする割合が最も高く、33.5%と3人に1人が望んでいることが分かりました。

ここまで、インターンシップ参加期間およびプログラム内容がインターンシップ後の心境にどのような変化をもたらすかを確認しました。学生はよりリアルな仕事体験をすることを望んでいるものの、インターンシップで実際の仕事体験をすると、思い描いていた理想だけではない仕事の側面を知り、いわゆるリアリティショックを受けているといえます。

図7

図8

図9

まとめ

参加期間およびプログラム内容とインターンシップ後の心境の変化より、学生はインターンシップを経験することで、企業に対して「よい印象」を抱き、「その企業で働きたい」と思う傾向があるものの、参加期間「1週間以上」またはプログラム内容「実際の現場での仕事体験」を経験すると、「悪い方に変化」または「その企業で働きたくない」と思う割合が高くなることが分かりました。
上記は学生が仕事のリアルを知ることにより、理想と現実のギャップを感じたためと推察されます。しかしながら、学生がインターンシップを通して予め現実を知ることは、その後その仕事の理解を深めるための情報収集の契機ともなりうるため、結果的に今後採用選考等のステップに進む段階でリアリティショックを軽減することに繋がる、とも考えられます。
なお、早期離職の理由の上位項目に、「仕事が自分に合わない(1年未満の早期離職 35.8%)」があることから、仕事と自己に対する正しい理解は入社後の定着にも影響しうると思われます(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 資料シリーズNo.171「若年者のキャリアと企業による雇用管理の現状」第6章早期離職とその後の就業状況_第3節「初職が正社員であった人の離職理由」より)。

最後に

冒頭で述べたインターンシップを実施した300人未満の企業において、採用の自己採点が高くなったことに影響した因子として「量」と「質」があるとすると、「質」を決めるのは学生の潜在的な資質だけでなく、企業との相性もあることと思います。

学生―企業間の相性は従業員数規模によらず確認したい重要なファクターであり、人対人の “相互理解”が相性を考える際の鍵となりうるといえるでしょう。
冒頭でご紹介した学生調査においても、入社予定先企業へのインターンシップ参加者の方が未参加者よりも入社予定先に対する満足度が高いことから、上記は学生にとっても同様であるといえます。

今回取り上げたインターンシップ調査の結果より、学生・企業双方にとって“リアルな相互理解”をするためには、一定の時間をかけた、現実的な仕事理解のできる内容のインターンシップがよさそうだ、ということが分かりました。

下イメージ図のように、学生・企業双方にインターンシップにおいて様々な段階があると思います。月並みですが、中長期的な計画を持って、ひとつずつ行動していくことが新卒採用・就職活動の将来を作ることに繋がるでしょう。

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