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2020.05.18Special Column 01 ~教育効果を向上させるインターンシップとは

はじめに

今回、インターンシップアワード応募企業のインターンシッププログラムに参加した4,235名の大学生・大学院生に調査を行い、参加したインターンシップに対して、様々な側面から評価をしてもらいました。以下は、本調査で得られたデータをもとに、多摩大学 初見康行准教授に分析していただいた結果の解説となります。

政府から出されたインターンシップ実施の意義として大学(学生)、企業別に以下が挙げられています。
*「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(文部科学省・厚生労働省・経済産業省)
インターンシップを大学(学生)と企業双方にとってより意義のあるものにするために、共通した目的になるものはないのでしょうか?今回の分析をとおして、この問いにひとつの答えが出ています。ぜひご覧ください。

教育効果を向上させるインターンシップとは

「インターンシップを通して学生の学習意欲を高めたい」
「大学の学習とインターンシップを結びつけたい」
「インターンシップによって、大学の学習内容を深めていきたい」

これらは、大学でインターンシップに関わる教職員が日々頭を悩ませ、創意工夫を重ねていることです。

しかしこれまで、どうすればインターンシップによって学生の学習意欲を高めることができるのか、学習意欲を高めるインターンシップとはどのようなものか、という点については多くの疑問が残されていました。

今回、株式会社マイナビと大学の共同研究により、「教育効果を高めるインターンシップ」について探索的な分析を行いました。本コラムでは、教育効果を高めるインターンシップのポイントについて紐解いていきます。

教育効果とは?

一口に教育効果と言っても多様なものが考えられます。今回の調査では、以下の4つの質問について、インターンシップアワード参加学生(4,094名)に答えてもらいました[i]。その回答結果を「教育効果」とし、インターンシップのどのような要因が影響を与えているのかを統計的に分析しました[ii]

①インターンシップ経験によって、大学等で学習していた内容がより深まった
②インターンシップ経験によって、大学等での学習意欲が高まった
③インターンシップ経験後、学習時間が増えた
④インターンシップ経験後、主体的に学ぶようになった

では一体、この「教育効果」を高めるためにはどうしたらよいのでしょうか。

はじめに、今回の調査で明らかになったことは、次の「4つの要因」がインターンシップ後の学習意欲・態度の向上に深く関わっているということです。1つずつ見ていきましょう。

教育効果を高める4要因

要因①:大学の専門・専攻との関連の深さ

教育効果を高める第1の要因は、「大学の専門・専攻との関連の深さ」です。これは、インターンシップの内容と大学の専門・専攻がどれくらい関連しているかを示しています。後ほど説明しますが、インターンシップの内容と大学の専門・専攻が関連しているほど、インターンシップ後の学習意欲が高まることが確認されました。

要因②:事前・事後学習の充実

第2の要因は、「事前・事後学習の充実」です。具体的には、インターンシップ前の「目標設定」、インターンシップ中の「フォロー」、インターンシップ後の「フィードバック」の3つが、どれくらい充実しているかを示しています。

要因③:就業体験の充実

第3の要因は、「就業体験の充実」です。これは、インターンシップの内容がどれくらい実際の仕事内容に近いものであり、それによってどれくらい仕事を理解することができたかを示しています。

要因④:社会人基礎力の向上

最後の要因は「社会人基礎力の向上」です。これは、社会人基礎力を構成する「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つが、インターンシップ経験を通してどれくらいが向上したかを表しています。

以上がインターンシップの「教育効果」を高める4要因です。まずは、読者のみなさんの大学・企業が提供しているインターンシッププログラムが、上記4点を十分に満たしているかをチェックすることが大切です。足りない要因があれば追加し、既に実施しているものもさらに充実させることによって、インターンシップ後の学習意欲を向上させることが期待できます。

インターンシップの教育効果モデル

ここまで読んで頂いた読者の中には、「4つの要因が重要なのは分かったが、どれがより重要なのか、どういうメカニズムで教育効果の向上につながるのか」という疑問を持たれた方もいると思います。

少し専門的になりますが、これらの疑問を明らかにするために、今回は共分散構造分析(SEM)という分析手法を用いて、4要因と「教育効果の向上」の関係を分析しました。図1は、その結果です[iii]

図1:インターンシップの教育効果モデル

図の内容を全て理解する必要はありません。4つの要因を中心に図を分解し、ポイントを説明していきたいと思います。

まず、「①大学の専門・専攻との関連の深さ」に注目してください(図2参照)。矢印が2本出ており、「③就業体験の充実」と「⑤教育効果の向上」に向かっています。これは、インターンシップの内容と大学の専門・専攻の関連の深さが、「③就業体験の充実」と「⑤教育効果」に直接影響を及ぼすことを意味しています。

図2:大学の専門・専攻と他要因の関係

言い換えれば、「インターンシップの内容と大学の学習内容が近いほど、就業体験が充実する、教育効果が高まる」ということです。特に重要なのは、この要因が「⑤教育効果の向上」に直接影響を与えている点でしょう。つまり、できるだけ学生の専門・専攻と関係の深いインターンシップをコーディネートすることが、その後の学習意欲・態度の向上に直接影響します。インターンシップの教育効果が、インターンシップが始まる前の段階から影響を受けるというのは、大変興味深い示唆です。

次のポイントは、「②事前・事後学習の充実」です。こちらもまず太い矢印が2本出ており、「③就業体験の充実」と「④社会人基礎力の向上」に向かっています(図3参照)。さらに、それほど強い影響ではありませんが、「⑤教育効果の向上」にも直接影響を与えていることが確認できます。

図3:事前・事後学習の充実と他要因の関係

事前の目標設定や事後の丁寧なフィードバックが就業体験の充実や社会人基礎力の向上に寄与するというのは、肌感覚としても納得がいくのではないでしょうか。漫然とインターンシップを実施するのではなく、事前の目標設定をしっかり行うこと、事後に良かった点・改善点などを個別にフィードバックすることが、インターンシップの内容を充実させ、効果を一段押し上げることにつながります。

次に、今回意外な結果となったのが、「③就業体験の充実」です。就業体験の充実は「④社会人基礎力の向上」や「⑤教育効果の向上」に肯定的な影響を与えており、大変重要な要因です(図4参照)。しかしながら、その影響の大きさは、.10もしくは.17となっており、他の要因よりも相対的に小さくなっています。就業体験を充実させることに日々努力している大学・企業にとっては、少し肩透かしな結果といえるかもしれません。

図4:就業体験の充実と他要因の関係

しかし、この結果を前向きに捉えることもできるでしょう。例えば、何らかの事情で就業体験(実際の仕事体験)を実施することが困難な業界・企業においても、「①大学の専門・専攻との関連の深さ」や「④社会人基礎力の向上」に注力することで、最終的な教育効果を高めることができます。

ポイントは、就業体験はインターンシップの「手段」であって「結果」ではないということです。今回の調査結果から、インターンシップの教育効果を高めていくためには、就業体験の充実だけでなく、それ以外の要因にも目を向けていくことの重要性が明らかになったといえます。

最後のポイントは、「④社会人基礎力の向上」です。図5を見ていただくと分かるように、「④社会人基礎力の向上」から「⑤教育効果の向上」に太い矢印が伸びており、その影響力は最も高いもの(.55)になっています。つまり、教育効果を高めるためには、インターンシップを通して社会人基礎力が向上したと学生が知覚・認知することが重要です。

図5:社会人基礎力の向上と教育効果の関係

なぜ社会人基礎力なのか?社会人基礎力の向上が、どのようなメカニズムで学習意欲を喚起するのか?という点については、本調査結果のみで明らかにすることはできません。しかしながら、分析結果から得られる重要な示唆は、社会人基礎力のような「スキル・能力」の獲得が、大学生にとって重要な要因になっているということです。

インターンシップの拡大に伴い、大学・企業はその内容改善に日々努力を重ねてきました。その活動は今後も重要である一方、本調査から明らかになったのは、インターンシップの内容と同じくらい、もしくはそれ以上に「インターンシップを通してどのようなスキル・能力が得られたのか」ということが、参加学生にとって大事だということです。

読者のみなさんの大学・企業では、インターンシップを通してどのようなスキル・能力が身に付くのかを学生にしっかり伝えているでしょうか。

本調査の結論として、今後は就業体験の内容から考え始めるのではなく、「学生に身に付けさせたいスキル・能力を基にインターンシッププログラムを組み立てていく」という発想・考え方が必要になっていくでしょう。また、広報する際も、インターンシップの「内容」だけでなく、身に付く「スキル・能力」をセットにして学生に伝えていくと良い効果が生まれるかもしれません。さらには、スキル・能力の向上を学生に実感してもらうための事前・事後学習の重要性が、今後さらに高まっていくでしょう。

以下は、今回の調査結果をもとにした「教育効果向上のためのチェックリスト」です。教育効果の改善を検討する際に、お役立て頂ければ幸いです。

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[i]「7.強くそう思う」から「1.全くそう思わない」の7件法によって回答。回答者の内訳は、性別(男性2,470名・女性1624名)、学部系統(文系2,339名・理系1,755名)、学校区分(学部3,175名・大学院919名)であった。

[ii] 4つの質問に対する回答結果を「教育効果」として尺度化(Cronbach α=.87)し、従属変数として分析を行った。その他の変数についても、「事前・事後学習の充実(α=.82)」、「社会人基礎力の向上(α=.93)」、「就業体験の充実(α=.86)」となっており、尺度の信頼性が確認された。なお、「大学の専門・専攻との関連の深さ」については、質問項目「参加したインターンシップの内容は、あなたの大学等での専門・専攻とどの程度関係がありますか」に対する学生の回答(7件法)を使用した。

[iii] 図の作成にあたっては、見やすさを優先するため誤差変数を削除した。また、図中のパス(矢印)は全て有意(p < .000)となっている。矢印の表記については、便宜的に標準化推定値が.20未満を点線(影響力小)、.20~40未満を実線(影響力中)、.40以上を太い実線(影響力大)とした。

 

「Special Column 02 ~企業への志望度を向上させるインターンシップとは」記事はこちら

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