今年、インターンシップに参加した学生たちによる座談会。後編をお届けします。(前編はこちら)
参加メンバー
Oさん(文教大学3年生・文系)
Sさん(東京工業大学3年生・理系)
Mさん(学習院大学3年生・文系)
Iさん(駒沢大学3年生・文系)
インターンシップの選考の合否は
学生の志望度にどう影響するのか
――選考があるインターンシップって、正直どうですか?
【Sさん】選考を通して、ある程度フィルターをかけてくれたほうがありがたいです。なぜなら、選考を通過した人は、自分と同等程度かそれ以上のスキルがあるということだから。半年間ともに働く仲間なので、一定以上のスキルがないと一緒に過ごすのは厳しいですね。選考がないと、私は応募を躊躇してしまいます。ただ同じ選考でも、Oさんが経験した「自分らしさを表現した写真で選考」というのは、どんな意図があるのか疑問です。
【Oさん】私もそう思いました! それでいったい私の何を見ているんだろうと。意味が見いだせない選考方法は、私たち学生としても疑問が残りますよね。
【Iさん】選考があると、個人的には応募のハードルが上がります。授業の課題とエントリーシートの提出のタイミングが重なってしまい、勉強を優先させるためにインターンシップの参加をあきらめた会社も何社かありました。正直、ボタンを押すだけでいい先着順のほうが、応募しやすかったです。
【Mさん】私は基本的に、入りたいと思った会社のインターンシップにしか応募しなかったので、選考の有無に影響されることはなかったです。確かにエントリーシートを記入するのは手間ですが、「自己PRを400文字で書きなさい」などとあれば、「この時点から、しっかり私を知ろうとしてくれているんだ」とポジティブに捉えていました。またこの経験が、就職活動時のエントリーシートを書く練習にもなりますしね。
【O】前向きですね!
――インターンシップの選考の合否は、入社の志望意欲に影響を与えましたか?
【Iさん】何社かの選考に落ちましたが、どうしても入りたい会社というわけではなかったので、まったく影響はありませんでした。ちなみに、インターンシップと採用の選考はまったく別だと聞いていたので、たとえ第一志望のインターンシップの選考に落ちたとしても、志望意欲は変わらなかったと思います。
【Oさん】逆に、インターンシップの選考に合格したからといって、志望意欲がアップするということもないですね。
【Mさん】Iさん、Oさんと同じで、私も合否によって気持ちがブレることはありませんでした。ただ、インターンシップの選考の合否はとても勉強になりましたね。合格すると、エントリーシートの内容に自信をもつことができましたし、不合格だと「どこがいけなかったんだろう?」と悶々とした気持ちに。ある意味、メンタル面で就職活動のいい予行演習になったと思います。
よくも悪くもインターンシップが
学生の企業イメージを大きく左右する
――インターンシップに参加してよかったことは何ですか?
【Oさん】会社やそこで働いている人の雰囲気を知ることができ、自分に合いそうかどうかを判断できたことです。たとえば、明るくて雰囲気がいい会社でも、あいさつが元気すぎると気圧されて、「自分には無理かも……」と思いました。
【Iさん】職場での仕事体験を通して、入社後の自分の姿をイメージできたのがよかったです。若手社員と直接話せる機会があり、本音でいろいろ教えてもらえたのも参考になりました。また、ある美容系企業ではエステの施術が受けられてラッキーでした。
【Mさん】実際の仕事に触れられるのは、やはり大きなメリットですよね。文系出身の私にとって、IT業界はまったく未知の世界でしたが、実際にサーバに触れさせてもらえたのは貴重な経験になりました。自分がセッティングしたサーバが動いたときの感動は、今でも忘れられません!
【Sさん】インターンシップに参加してよかったのは、プロの環境に身を置いて実際のプロジェクトに参加し、収入を得ながら実務に携われたこと。自分が開発に携わった製品が全世界にデリバリーされたときは、仕事の醍醐味を味わうことができました。
【Oさん】私は、あるIT企業のインターンシップで経験した営業のシミュレーション体験が印象に残っています。人事担当者さんがクライアント役になって、営業役の私にあえて厳しい質問をたくさんしてくれたのです。そのときはツラかったのですが、仕事の厳しさを教えてもらうことができてよかったなあ、と感謝しています。
――企業イメージがアップしたインターンシップは?
【Mさん】あるIT企業のインターンシップは、内定者、入社1年目、入社3年目など、いろいろな年代の社員さんと接する機会を設けてくれていました。学生のことをすごく考えてくれていることが伝わってきて、その企業のイメージがグンとアップ。しかも、「次はどんな人を呼んできてほしい?」とリクエストまで募ってくれたのです。
【Oさん】私が好印象を抱いたのは、インターンシップの終了後に、学生一人ひとりにフィードバックをしてくれた企業です。「積極性があるね」とほめてもらえたときは、大きな自信になりました。また、ある人材企業では、その会社独自の適性検査を受けさせてもらうことができ、それをもとに面接のアドバイスまでしてもらえたんです。今後の就職活動の役に立つ有意義なインターンシップで、その企業に対する印象がすごくよくなりました。
【Iさん】ある食品会社のインターンシップで、「いつでもエントリーシートの添削をしてあげるから、遠慮なく連絡してきていいよ」と言われたときは感動。そこまで真摯に学生に向き合ってくれるんだ、と驚きました。大学のキャリアセンターは混んでいるし、17時までしかやっていないし、とても心強かったです。また、ちょっとしたことですが、以前参加したインターンシップに再び参加した際、担当者さんが私の名前を覚えていてくれたのは、やはりうれしかったですね。
【Sさん】私はインターンシップに1社しか参加していませんし、技術を身につける目的で通っていたので、特に企業イメージについては気にしていませんでした。ただ、ある特定の分野で世界トップクラスの技術力を誇る会社の、舞台裏を覗けたことが大きな収穫に。実際に働いている人だけしか知ることができない情報にたくさん触れ、その会社のすごさを肌で感じることができました。
――逆に、企業イメージがダウンしたインターンシップは?
【Mさん】一番衝撃的だったのは、仕事体験プログラムだったはずなのに、社長の演説を延々と3時間も聞かされただけのインターンシップです。しかも、次は大丈夫だろうと思って、その数ヵ月後にもう一度参加したら、また社長の演説が3時間。当然、その会社には入りたくないと思いました。
【Iさん】企業イメージがダウンしたのは、ある飲食企業のインターンシップ。店舗で仕事体験ができ、そのお店のランチが食べられるという内容だったんです。10~17時までのプログラムでしたが、ランチが出てきたのは16時。お腹が空きすぎていて、インターンシップの途中から何も頭に入らなくなってしまいました。せめて、事前に「ランチは16時」と教えておいてくれていたらよかったのに……。
【Oさん】私たち学生が見ている前で、上司が部下を叱りつけているシーンを目撃したことがあります。叱るのは別に悪いことではないのですが、「何もここでやらなくてもいいのに」と、なんだかガッカリしてしまいました。
【Sさん】私は半年間に及ぶインターンシップ経験を通して、その会社は開発環境が古く、給与体系もあまりよくないということが分かってしまって。もともと就職するつもりはありませんでしたが、やはり自分のファーストキャリアとしてはちょっと違うなと感じました。
学生が企業のインターンシップに求めること
――インターンシップを経験した学生の立場から、企業への要望は?
【Iさん】20社のインターンシップに参加して感じたのは、現場の社員さんから直接リアルな声が聞ける機会が少ないということ。もっと、実際に働いている方々と交流できる機会が増えるといいのにな、と思いました。
【Mさん】同感です。私が参加したインターンシップは、自己分析の時間がやたらと長いところが多くて。それよりも、会社のことをもっと知りたかったのに、と消化不良で帰ったことが何度もありました。
【Iさん】質問コーナーで現場の社員さんが登場してくれたインターンシップがあったのですが、人事担当者さんが質問を投げかけてそれに社員さんが答えるというスタイルで、内容がマニュアル化されていてガッカリしたことがあります。社員さんが、手に隠したカンペを見ながら答えているのを見てしまったときは、とても落胆しました。
【Oさん】企業的にはあまり出したくないと思うのですが、会社や仕事の厳しい部分もしっかり見せてほしいです。でないと、入社後にミスマッチの原因になるんじゃないかな、と思いました。
【Mさん】インターンシップの担当者さんは、学生に対してちょっと甘いかな、という印象を受けました。なかには、グループワークの発表時間がオーバーしているにもかかわらず、「いいよ、いいよ」となあなあにしていた企業も。社会人は時間厳守が鉄則だと思うので、そういうところはピシッとしてもらえた方が嬉しいですね。
【Sさん】業界や職種によってできるできないはあるでしょうけど、私が参加したインターンシップのように、実践的な経験をしっかり積めるチャンスがもっと増えればいいと思います。
【Mさん】インターンシップは、必ず会社のオフィスで実施してもらいたいです。ホテルの結婚式場のような会場を貸し切って開かれたインターンシップに参加したことがあるのですが、リアリティがなさすぎて……。しかも、天井から吊り下がっているシャンデリアが邪魔で、壇上のスクリーンの映像が全然見えませんでした。
【Iさん】欲を言えば、土日に参加できるインターンシップがあれば嬉しいです。インターンシップに参加するために授業を休むのは、なんだか本末転倒なような気がして。
【一同】インターンシップは企業と学生をつなぐ貴重な機会なので、双方にとって大きなメリットが得られる内容のプログラムがもっと増えるとうれしいですね。
取材後記
今回参加してくれた学生たちは、大学や学部、希望する業種・職種もバラバラでした。それぞれの立場よって、求めるプログラム期間は様々。スケジュールの都合上1日のプログラムを選んだ学生もいれば、自分の力を試すために半年間かけてみっちり参加し、報酬を貰っていた学生もいました。
ただ共通で言えたのは、インターンシップの選考やプログラム内容の充実度、実施する企業の雰囲気についてはシビアな目線で見ているということです。
・学生が納得できるインターンシップ選考になっているか
・事業内容・具体的な仕事内容をきちんと伝えられる・体験させることが出来るプログラムになっているか
・人事担当者だけではなく、様々な立場の社員と関わることができるか
・参加学生へのフィードバックはあるか
これからインターンシップを企画・運営する企業・大学の皆様は、是非ご参考にしていただければと思います。