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2020.01.27学生がインターンシップに期待していることは参加期間毎に異なる~1日では知らぬを知る、1週間では深くを知る~

インターンシップという言葉を聞いて久しい昨今ですが、「学生はどんな視点でインターンシップを選んでいるのだろうか」と疑問に思う方はいらっしゃるのではないでしょうか。
今回のコラムでは、企業・学生の市場動向を改めて確認した上で、 “参加期間と参加目的“にフォーカスして、学生は何をインターンシップに期待しているのかを紐解いていきます。

【企業・学生双方の立場から見る、インターンシップの今】

はじめに、インターンシップの実施率・参加率と実施期間・参加期間の潮流を振り返ります。

《実施率・参加率》

学生は2019年10月時点のインターンシップ調査において、84.9%が「参加したことがある」と回答しており、一人平均3.2社参加しています。5年前と比較すると、学生の参加率は1.5倍に、平均参加社数は1.7倍に増加しました(「2019年度マイナビ大学生インターンシップ調査(2019年10月実施)」)。
新卒採用を行う企業では21年卒においてインターンシップを実施する(予定含む)とした企業は55.7%と、5年で1.7倍に増加していますが、企業側でインターンシップの実施率が8割を超えているのは従業員数1,000人以上の企業に限られており、従業員数1,000人未満の企業では、実施率は増加傾向にあるものの、まだ過半数の実施には至っていないのが現状です(「2019年度就職採用戦線総括(p.19)」)。
インターンシップにおける問題点として、従業員数規模に依らず「母集団(エントリー数)の不足」「マンパワー不足(他業務との兼ね合い含む)」が挙げられ、従業員数1,000人未満の企業では「企業の知名度がない」「プログラム内容の充実度」が次点に続き、従業員数1,000名以上の企業では、「プログラム内容の充実度」「協力社員の確保が難しい」が次点に続いています(「2019年度就職採用戦線総括(p.18)」)。

《実施期間・最も参加しやすいと思う期間》

インターンシップの実施期間について、新卒採用を行う企業は21年卒では1日開催が70.5%、2~3日が36.4%、1週間が35.3%と回答しておりました(「マイナビ企業採用活動調査(2019年6月実施)」)。期間別に経年の推移をみると、1日開催のインターンシップは20年卒対象をピークに21年卒では減少し、1週間以上開催のインターンシップは減少傾向に、2~3日開催のインターンシップが増加傾向にある様子が窺えます。企業側のインターンシップ実施期間を決定する際に影響している原因として、先述した問題点で挙げました「マンパワー不足」、「協力社員の確保が難しい」があると推察されます(「2019年就職採用戦線総括(P.18)」)。
一方で学生に最も参加しやすいと思うインターンシップの期間を聞いたところ、「1日」と回答する割合が61.7%となり過去4年で増加傾向にあります(「2019年度マイナビ大学生インターンシップ調査(2019年10月実施)」)。

企業側が短期間のインターンシップ開催に至る背景には、人手不足や社内の協力体制の整備状況があることが想定されますが、なぜ学生は”1日単位のインターンシップが参加しやすい”と思う傾向があるのでしょうか。学生が参加しやすいと思う期間の背景には、どのような期待があるのでしょうか。

【参加しやすいと思う期間毎に見る、インターンシップの参加目的】

“学生がインターンシップに期待していることは期間毎に異なるのか”について、「インターンシップに参加する目的(複数回答)」および「インターンシップに最も参加しやすいと思う期間」を再集計し、調べました(「2019年度マイナビ大学生インターンシップ調査(2019年10月実施)」、図1)。

期間に関わらず、参加目的を「特定の企業のことをよく知るため」と回答した学生は約7割であり、次点以降には「自分が何をやりたいのか見つけるため」、「志望企業や志望業界で働くことを経験するため」、「仕事に対する自分の適性を見るため」が続きました。特に「1日」と回答した学生においては、「自分が何をやりたいのかを見つけるため」(70.6%)、「仕事に対する自分の適性を知るため」(55.3%)といった“全体的な自己理解・仕事理解”を目的に参加をする割合が「2~3日」、「1週間以上」とした学生よりも高い傾向が見られました。
一方で、最も参加しやすいと思う期間のインターンシップを「1週間以上」と回答した学生においては、「社会勉強のため」(40.4%)、「自分の力を試すため」(26.7%)、「自分の専攻が社会で役に立つか知るため」(25.3%)を参加目的と回答する割合が「1日」、「2~3日」の学生よりも高く、インターンシップを広い意味での実践的な学習の場や日頃インプットしているものをアウトプットする場として捉えている様子が窺えました。以上より、「1週間以上」のインターンシップを選択する学生は、「1日」、「2~3日」のインターンシップを選択する学生よりも、自分が知りたいことが明確な学生が多い、と推察されます。

図1

【まとめ】

参加しやすいと思う期間ごとにインターンシップの参加目的を確認することによって、学生は参加期間によらず、「企業のことをよく知るため」にインターンシップに参加をしていることが分かりました。また1日単位のインターンシップを希望する背景には、全体的な自己理解・仕事理解をすることを通して、まだ知らない自分の価値観や適性を知りたいという学生の心情があり、1週間以上のインターンシップを希望する学生には“知りたいこと”が具体的にありそれを確かめたいという心情がありそうだと推察されます。

インターンシップ参加者が年々増加し、1日のインターンシップを希望する学生が増加傾向にある一因として、上記より、就職活動を開始する前に、「書籍やインターネット等の情報との対話だけでなく、リアルな情報と照らし合わせて将来の自分のキャリアについて考える機会を設けたい」、と思う学生が増えてきているということがあるかもしれません。

今回の結果を活かしプログラムを考える際に取り入れられる工夫として、1日などの短期開催、1週間以上の比較的長期間の開催で次のものがあると思います。
まず、短期開催のインターンシップのプログラムを考える際には、学生がインターンシップを通して何か自分に対する気づきが得られるような工夫を取り入れてみること、また、1日開催のインターンシップであっても、同じ学生に複数回参加してもらうことで、仕事に対する理解を深めてもらうことができるでしょう。長期開催のプログラムを考える際には、インターンシップを通して学生が今持っている力+αで取り組めるチャレンジングな経験ができる工夫を取り入れることで、学生の知的好奇心を刺激できる内容になるかと思います。

本考察は夏を終えた10月時点の調査から読み取れたことであり、これから冬季に向かい学生の意識も変わっていくかと思いますが、本コラムが学生・企業双方にとって得るものが多いインターンシップを考えていく際の一助となれば幸いです。

参考コラム:インターンシップが企業・学生双方の満足度に影響する理由を探る

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