10月より2020年度『学生が選ぶインターンシップアワード』の応募受付が開始されました。
インターンシップアワードは、2020年度開催分で、第3回目となりますが、これまで、インターンシップに熱心に取り組まれている多くの企業・団体からのたくさんのご応募をいただいてきました。本アワードでは、選考の際、有識者の方々だけでなく、インターンシップの主役である学生の皆さんにも入っていただき、『良いインターンシップとは何なのか』という問いに対して、活発な議論が繰り広げられています。
今回のコラムでは、これまでのインターンシップアワードを通じて得られた情報をもとに、大学の先生方とともに検証してきた
・インターンシップがもたらす効果とは
・学生の志望度を上げるインターンシップとは
についてご紹介いたします。
【はじめに】 学生が選ぶインターンシップアワードとは
学生が選ぶインターンシップアワードとは、学生の職業観涵養および社会的・職業的自立に貢献したインターンシッププログラムを表彰し、学生にとって良い効果をもたらすプログラムの傾向等を社会に伝えることで、インターンシッププログラムの質的向上および実施企業数の増加を実現し、学生と企業のより精度の高いマッチング促進を目的とした取り組みです。
インターンシップがもたらす効果とは
「大学生はインターンシップ経験からどのような効果を得ているのか?」という疑問を出発点として、インターンシップアワードの学生評価の内容を基にマイナビと初見・梅崎・坂爪(2018)の共同研究によって提示された5つの効果があります。
(概要)
初見・梅崎・坂爪(2018)によれば、大学生はインターンシップから上記5つの効果を得ており、これらの効果が向上することで内々定の有無や内々定先への満足度の有無など、将来の就職活動結果に影響を及ぼすことが報告されています。
①キャリアの焦点化と②キャリアの展望化は一見、相反する内容に思われますが、弊社実施の調査によると、学生が「インターンシップに参加する目的」として最も多く挙げられているのが「特定の企業のことをよく知るため」、次いで、「自分が何をやりたいのかを見つけるため」となっており、いずれも6~7割の高い割合となっています。
つまり、興味関心を持っている業界や仕事への理解を深め、更にイメージを明確化する方もいれば、自分が何に興味関心があるのかはっきりとわからない状態だったが、視野が広がったことによって、これまで知らなかった業界や仕事を知ることになり、キャリアを広く考えられるようになった方もいるということがわかります。
(出所)2018年度マイナビ大学生インターンシップ調査(2018年9月~10月実施)
学生の志望度を上げるインターンシップとは
上記の5つの効果が提示されたことによって、インターンシップが学生にとって効果があることは示されましたが、さらに、この5つの効果と志望度の関係を分析した結果があります。
※詳細は、「2019年度新卒採用就職戦線総括(20年卒版)」P.6寄稿『企業にとってのインターンシップ効果とは?インターンシップと志望度の関係』(多摩大学 経済情報学部 初見 康行准教授)をご覧ください。
https://saponet.mynavi.jp/wp/wp-content/uploads/2019/10/2020_saiyo_saponet_1_Part1.pdf
分析の結果、インターンシップの5つ効果が向上するほど、企業への志望度が向上することがわかっており、特に「キャリアの焦点化」と「参加企業への志望度」の相関が最も高くなりました。インターンシップを通じて、「自分が本当にやりたいことがわかった、興味ある業界・企業の絞り込みができた、将来のキャリアプランが明確にしなった」という気持ちにさせることが、インターンシップ参加企業への志望度向上につながることが示唆されました。
また、インターンシップの5つの効果の中でも「キャリアの焦点化」「キャリアの展望化」「人的ネットワークの認知」「就労意欲」の4つの効果を向上させるようなインターンシップが、参加企業への志望度向上に有効であることが確認されています。
では、『志望度を向上させるインターンシッププログラム』とはどういうものなのでしょうか?
「インターンシップの5つの効果・志望度の関係」
参考:初見 康行.“インターンシップアワードから紐解く学生の価値観” 第2回 学生が選ぶインターンシップアワード
上図に示したように、志望度を向上させるインターンシッププログラムの特徴を分析した結果、4つの特徴が明らかになりました。
1つは「個別のフィードバック」です。インターンシップ期間中のフィードバックには様々な形式があると思いますが、大きく分けて、グループやチーム単位で行うフィードバックと、個人に対して個別で行うものがあると思います。学生の志望度を向上させるのは後者の「個人に対して個別に行うもの」となります。
2つ目は「多様な社員との交流」です。これは多様な年齢層や役職の社員と交流させるということです。世代の近い若手社員だけでなく、中堅・管理職・役員など、多様な社員と交流させることによって、学生は多面的にその会社や仕事を理解するとともに、自分の将来像を重ねてみるのかもしれません。
3つ目の「座学以上の工夫」、4つ目の「企業の特徴を活かしたプログラム設計」ですが、いずれもインターンシップのプログラム内容に関わる項目です。学生にとってインターンシップに参加することが一般的になり、複数のインターンシップに参加する学生も増えてきており、志望度向上のためには、「その企業だからこそ経験できる」プログラムが求められていると解釈できるでしょう。
まとめ
文部科学省・厚生労働省・経済産業省より提示された「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方(2017年一部改正)」のなかに『インターンシップの意義』という項目があり、以下のように示されています。
①大学等及び学生にとっての意義
・キャリア教育・専門教育としての意義
・教育内容・方法の改善・充実
・高い職業意識の育成
・自主性・独創性のある人材の育成
② 企業等における意義
・実践的な人材の育成
・大学等の教育への産業界等のニーズの反映
・企業等に対する理解の促進、魅力発信
これまでの調査・分析によって「高い職業意識の育成」といった職業観涵養の側面では一定の効果が明らかになっていると思われますが、教育的意義に関しては、まだ検証の余地があると考えております。
また、これまでの分析によって、「良いインターンシッププログラムとは何か」を示すアウトラインが徐々に明らかになってきましたが、更に具体的な内容に踏み込んでいく必要もあるでしょう。
今後も、学生から寄せられた声をさらに分析し、これらの問いに対する答えが出せるよう、引き続き、模索していきます。
最後になりましたが、現在、2020年度インターンシップアワード応募受付中期間となっております。
インターンシップを実施されている大学・企業・団体の方がおられましたら、ぜひ奮って、ご応募ください。