着実にクオリティがアップしていると実感
インターンシップによる地方創生の可能性も
受賞法人のプログラム紹介や表彰式に続き、選考委員の法政大学 キャリアデザイン学部 坂爪洋美教授による講評が行われました。今回のインターンシップアワードでは、3つの気づきがあったといいます。
「1つ目は、応募法人様が毎年ブラッシュアップを続けることで、着実にプログラムのクオリティが高まってきていることです。2つ目は、オンライン化の定着。リモートで実施せざるを得なかった前回と違い、オンラインの強みを活かすという進化が見られました。そして3つ目は、企業・大学・自治体などの連携による、多様なプログラムが目立ったことです」
また、坂爪教授はインターンシップの新たなムーブメントにも注目。具体的には、“インターンシップによる地方創生”という可能性を見出したという。
「地方公共団体様のプログラムを拝見し、インターンシップが地方の人材育成や課題解決につながるなど、地域の活性化やさらなる発展に寄与するということがわかりました」
今回受賞した数々のプログラムには、
インターンシップを進化させるヒントが満載
次に、坂爪教授は受賞法人のプログラムについて、キーワードを添えながら講評を行っていった。そこには、インターンシップを進化させるうえで、とても有益なヒントが含まれている。
「大賞を受賞したボッシュのキーワードは、『コロナ禍でもグローバル体験を』です。オンラインを活用して、学生にグルーバル体験を提供。さらに、横浜研究所でのリアルな体験を組み合わせることで、満足度の高いプログラムになっています」
文部科学大臣賞を受賞した大東文化大学は、「綿密な作りこみ」が高く評価された。特に、後期のプログラムが非常に工夫されていたという。
「『いい経験ができてよかった』で終わらせるのではなく、インターンシップで得られた貴重な経験を活かして学生の可能性をさらに広げる、という意気込みが伝わってきました」
地方創生賞を受賞した滋賀県&いろあわせのキーワードは、「わからないから始まる出会いを創る」。複数の企業と複数の大学を組み合わせる仕掛けが素晴らしかったと振り返る。
「“多”と“多”を組み合わせるのは、難易度が高かったはず。偶然の出会いを活かすというコンセプトのもと、学生の視野やチャンスを広げる、いい仕組みが構築できていると感じました」
坂爪教授が、「多様な職場に身を浸す」というキーワードを掲げたのが、三菱ふそうトラック・バス。有償の長期インターンシップで、期間を自由に選べるのがポイントだ。
「長期間職場に身を置くことならではの、リアルな就業体験ができるという内容。グローバル人材との交流機会があるほか、リモートワークも経験できるなど、多くの学びが得られるよう工夫されていました」
ミルボンは、「個への確かなまなざし」が見事だったという。目的がはっきりしていることと、学生へのメッセージがクリアになっている点を高く評価した。
「社員とのロールプレイをリモートで行うなど、オンラインを上手に活用していた点も高評価。フィードバックの方法も洗練されており、学生一人ひとりとしっかり向き合っている印象を受けました」
いい意味で期待を裏切るプログラムが毎年登場
インターンシップの可能性は無限大
坂爪教授によると、本アワードはインターンシップのプログラムを構築するうえで、大きな学びの場になるという。
「受賞プログラムから多くのことを吸収することで、インターンシップの精度をより高めていけます。その際に大切なのは、単に真似るだけではなく、そこに自団体ならではのオリジナリティをプラスすること。そうすることで、プログラムのオリジナリティを高めることができます」
毎年審査にあたるたびに、インターンシップが成熟したと感じるという坂爪教授。ところが、翌年に新たなインターンシップに触れると、「こんな素晴らしいプログラムがあったんだ」と驚かされるのだとか。
「毎回、新たな発見があります。つまり、インターンシップはまだまだ大きな伸びしろがあるということ。次回も、新たな可能性との出会いを楽しみにしています」
法政大学 キャリアデザイン学部 教授
坂爪 洋美氏
慶應義塾大学文学部卒業。人材紹介会社を経て、同大学大学院経営管理研究科博士課程単位取得退学(経営学博士)。2015年4月より現職で、専門は産業・組織心理学、人材マネジメント論。近著に「インターンシップでの社会人との関わりが大学生のキャリア探索に与える影響―A社のインターンシップ参加学生への事前・事後調査を通じた分析―(共著)」など。