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新潟大学燕市に多国籍な学生を集め、地域協働を図る。課題解決型プログラムをさらに進化させたい。

3年目を迎えた『学生が選ぶインターンシップアワード』。全361法人計482プログラムの中から優秀賞(6法人のうちの1法人)に選ばれたのが、新潟大学工学部の「G-DORM国際展開インターンシップin燕市」でした。新潟大学 牛木辰男学長、小椋一夫工学部長、および公益社団法人つばめいと 山後春信代表理事が受賞の喜びと謝意を示されました。また、この取り組みを主導された新潟大学工学部 坪井望教授、上田和孝特任准教授、若林悦子助教(公益社団法人つばめいと事務局長兼任)の3名に、入賞の喜びや成果を語っていただきました。(※撮影日:2020年7月1日)

課題解決型インターンシップの価値を示したい、と考えて応募。優秀賞受賞はこの上ない喜び。

 

―まず第3回「学生が選ぶインターンシップアワード」に参加しようと思ったきっかけと、優秀賞を受賞されたときの感想を教えてください。

過去2回開かれた「インターンシップアワード」の内容を見まして、学生の社会的・職業的自立に貢献するプログラムを表彰するものとして意義深く、レベルの高い大会であることを知りました。第3回からは大学が表彰対象に加えられたことで、大学の世界展開力強化事業(2016~2020年度:文部科学省採択事業)の一環として本学が行っている国際的な課題解決型のインターンシップがどんな位置にあるのか、価値を確かめる良い機会になると感じたことが参加のきっかけです。アワードの趣旨に共感を覚えたこともあり、一生懸命書いて応募した次第です。

今回、優秀賞を受賞しましたことは、私たちにとってはこの上ない喜びでした。学生や有識者の皆さんから評価していただいたことに元気づけられ、非常にありがたく感じているところです。

 

―今回の受賞プログラムには「G-DORM(ジードーム)」とありますが、どんな意味があるのでしょう?

G-DORMのGはグローバル、DORMはドミトリー(Dormitory:寮)の略で「メコン諸国と連携した地域協働・ドミトリー型融合教育による理工系人材育成」という意味が込められています。新潟大学では従来から環東アジア地域を主とした国際ネットワークを形成し、国内外地域の機能強化に向けた活動を展開。この一環で、工学部でも王立プノンペン大学(カンボジア)、ラオス国立大学(ラオス)、チュラロンコン大学(タイ)、ハノイ工科大学(ベトナム)の4大学と連携し、短期(10日間程度)、中期(2か月)、長期(6~12カ月)の受入・派遣プログラムを実施しています。

いずれも本学とメコン地域の理工系学生が、学年や専門、国や性別も超えたグループを結成し、ドミトリーつまり寮生活をするように情報を共有し、課題について話し合い、チームとして解決策をアウトプットするまでの活動です。まさに現在の企業活動で必要な能力の養成につながるプログラムといえるでしょう。中期・長期では大学院生も対象にメコン地域の日系企業などを舞台に、貴重な体験を重ねる学生もいます。

これにより地域協働による産学連携の視点、融合分野的発想力、国際性、リーダーシップ、さらに産業変遷の一環的プロセスの知見を涵養し、地域創生につながる課題解決能力と融合的視点をもった理工系グローバルリーダー人材を育成するのが狙いです。

「公益社団法人つばめいと」と連携し、燕市企業の課題解決に多国籍で挑む

 

―今回は短期プログラムでの応募が優秀賞受賞につながったわけですが、特徴を教えていただけますか?

工学部では従来からドミトリー型の教育として、ロボットコンテストやフォーミュラ大会への出場など、チームによるものづくりを活発に行い、その成果を社会に発信してきました。そうした伝統を継承し、多様な国と地域を巻き込み、リアルな課題に正面から取り組める教育を行うことはできないかを模索。短期をきっかけにステップアップできる機会として、学生に刺激を与え、挑戦心を高めたい思いがありました。近隣にある燕市はまさに金属加工業や洋食器づくりで世界的に有名な工業都市で、本学の学生が世界と地域を見つめインターンシップを行うには格好の場所と考えました。

最大の特徴は、新潟市の近隣にある燕市と共に産業振興活動に取り組んでいる「公益社団法人つばめいと」と本学が連携していることです。「つばめいと」は2016年11月に一般社団法人として設立され、2018年に公益社団法人になりました。2017年から本学のインターンシップに協力し続けてくれています。いわば燕市で、企業と学生をつなぐコーディネーター役といえるでしょう。

若林助教はかつて「つばめいと」の職員だったのですが、クロスアポイントメント制度のもと2018年からは「つばめいと」事務局長と本学助教を兼任することになり、協力体制がより強固になりました。今は本学で「協創経営プログラム」の授業も担当してくれています。

「つばめいと」は燕市の企業と本学や他大学の多様なインターンシップのマッチングの手助けを精力的に行っており、今回も地域企業のデータベースの中からインターンシップ先6企業の選定に尽力してもらいました。学生たちの成長と感動の場を共に創り上げ、燕市と大学の架け橋的存在になってくれています。

単なる見学や作業体験ではなく、チームでリアルな課題解決の提示に尽力

 

―今回、特に注力したのはどのあたりでしょう?

「つばめいと」は近年、燕市内の企業からの寄付金で、国内外の学生が宿泊できる施設「つばめ産学協創スクエア」を建設しました。2019年8月のインターンシップ期間は、留学生も学生もそこで生活ができ、まさにドミトリー型と呼ぶにふさわしい実践的プログラムを実現できました。

今回はメコン諸国の連携4大学から留学生17名と本学の学生11名が混在する6グループが参加。本学での事前学習の後で燕エリアの6社企業と協業し、各企業から提示された課題への解決提案にグループで取り組みました。過去からの継続的視点から、今回の大テーマは燕市企業全体の課題でもある「IT化」でした。

実際に「つばめいと」を介して、本学インターンシップの趣旨やテーマを理解し、共通語を英語とする取り組みに理解がある企業、アジア圏と協働する意識の高い企業、留学生受け入れに積極的な企業を選定しました。

また企業からは「学習設計シート」と呼ばれる計画書に、現時点の課題を書いてもらい、学生には単にIoTやAI化を進めようといったステレオタイプではなく、工場の課題を詳細に把握するように指導。燕企業が保有する産業技術を見たり、ヒアリングや作業体験をするだけでなく、毎日必ずグループで話し合う時間を設け、解決策を考え提案につなげるよう事前に伝えておきました。

英語が共通言語ですので、メコン地域の留学生には、本学学生が英語で企業の特徴を伝えると共に、日本語で書かれた課題を英語に翻訳する役割もありました。

最終日はグループごとにプレゼンテーションがありましたが、例えば紙ベースの書類や伝票、Faxなどを電子化・データベース化したり、発注書や納品書をExcelにしたりすることでもっと効率化できるといった、まさに現場視点から現実的な解決につながる発表がなされました。あるグループに入ったタイの留学生は画像解析が専門で、彼女がグループを主導した結果、工場に画像認識・解析アプリを利用することでライン改善や省力化につながるといった提案もありました。本学の学生も優秀な彼らに触発されることは多かったようです。

参加企業はこうした提案に納得もし、喜びも表明していただきました。実際の経営や現場で働くうえで役立つという声もあり、意義深い場になっています。

今回の優秀賞受賞においても「事前に仮説を設定し、現場体験を通じて仮設の検証を行った後に提案が行えている」点、「事前学習の充実と地元企業との密接な関係構築が行えている」点を評価していただけたことは喜びです。

学生の、外へ向かう気持ちが一層高まる。SNSでの活躍の報告・関係者の声も喜びに

 

―今回の受賞後、学内外の反響はどうでしたか?

受賞した・しないに関わらず、企業の多くが翌年も引き続き協力したいと言ってくれたり、中期・長期のインターンシップにも協力いただいたりしています。また参加した学生も、グループワーク開始段階では意思疎通を図るのに苦労する様子も見受けられましたが、実際に燕市滞在中は寝食を共にし、地域のお祭りに参加するなど文化交流もする中で、友好を深める姿がありました。

体験を通して、専門性だけでなく「異文化理解や英語力、背景が違う者同志のコミュニケーションの重要性を改めて認識した」という学生が多いです。企業の現実を知りコミュニケーション力も高まった中で、「次は中期・長期プログラムに参加してみたい」という学生も多く、外へ向かう意欲がますます高まっている姿は嬉しい限りです。寮生活を送ることで親交を深め、その後SNS等で連絡を取り合う学生も多いようです。

何より嬉しいのは、インターンシップを経験した国内外の学生が大学院進学や就職を果たし、「今、こんな研究、こんな仕事で頑張っています」とSNSで報告してくれること。燕市での経験を思い出し、「今回の受賞を、私たちも喜んでいます」といった声も嬉しいものです。

本学の学長をはじめ、他の教授陣からも「おめでとう」とか「普段から頑張っている成果だね。良かった」と声を掛けられる機会も多くなりました。私たちのプレゼンスも高まり、学生が多方面で活躍する姿はもちろん、関係者たちの声も大きな励みになっています。

今回の受賞は外部に対して、海外との関係性を踏まえて地域協働していることへの認知につながりますし、次回のインターンシップの広報にも役立つでしょう。本学にしっかりとした動機をもった学生が入学してくれるなど、学内外に大きな波及効果があると感じています。

グローバルビジョンの獲得だけでなく、地域に貢献する卒業生が生まれれば本望

 

―インターンシップの取り組みの課題を踏まえ、今後の展望や抱負をお願いします。

2020年は春先から新型コロナウイルスの影響があって出入国制限がかかり、海外派遣はもちろん留学生の受け入れも難しくなってしまったため、従来のような活動ができない状況になったことが残念でなりません。ただそんな状況の中で、今回の受賞は希望になりました。

本賞をいただいたことを糧に、本活動の更なる進化に努め、学生の成長のみならず、企業および地域さらには諸外国の発展に貢献できるよう、関係各位と協働して精進していきたいと考えています。

具体的にはインターンシップは対面が基本ですが、今後はオンライン活用による非対面の講義や対話をいかにミックスさせるかも重要だと感じています。

国内外・他地域の短・中・長期インターンシップも活用することで、グローバルキャリアビジョンを有し、諸外国との架け橋となる人材の育成に尽力していければ幸いです。将来的には、学生が燕市の企業に就職したり、他地域に就職しても燕エリアの企業と連携を図って新事業を生み出したり、地域活性化につながる人材を輩出できれば私たちにとっても本望です。

なお本学は、工学部のG-DORM以外にさまざまな課題解決型インターンシップに取り組んでいます。今後もwithコロナ・afterコロナに適合しながら、インターンシップアワードの獲得を目指し、より充実した中身の濃い活動を展開していければと思っています。

 

―最後にインターンシップアワードに期待することはありますか?

とにかく一生懸命に取り組んでいる法人を、適正に評価し褒めてくれるとありがたいですね。大学や企業、学生の背中を押し続けてくれることを願っています。

 

「学生が選ぶ インターンシップアワード」
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