1889年にアメリカ人宣教師のウォルター・ラッセル・ランバスが創設した、関西学院をルーツとする関西学院大学。創立以来、隣人・社会・世界に仕えるために自らを鍛える「Mastery for Service(奉仕のための練達)」というスクールモットーのもと、キリスト教主義に基づいた教育を実践しているのが特徴だ。14学部、14研究科で構成された総合私立大で、約25,000名もの学生が学んでいる。
関西学院大学では、「卓越した異文化理解・コミュニケーション能力を持ち、多文化を共生させながらグローバル社会の持続的な発展・成長に寄与する世界市民リーダーズの育成」を目的に、カナダの4大学(トロント大学、クイーンズ大学、マウント・アリソン大学、ウエスタン/キングス大学)と共同で、バーチャルカレッジのCross-Cultural College(CCC)を運営。2011年度には、文部科学省「大学の世界展開力強化事業」採択プログラムに選ばれた。CCCのカレッジ長であり、国際教育・協力センター教授でもある矢頭典枝さんは、次のように語っている。「CCCでは国際ビジネスをテーマに、多国籍な環境で活躍できる実践的な能力を養うことを目的としたプログラムを複数提供していますが、その中の一つが文部科学大臣賞を受賞した『Cross-Cultural College Global Internship in Japan(GIJ)』です。使用言語は英語のみで、日本とカナダの学生がペアを組み、インターンシップ先の企業・団体のビジネス課題に取り組むプログラムです。」
リアルなビジネス課題に挑む課題解決型のプログラムであることに加え、日本とカナダの学生が共に学ぶことで、異文化コミュニケーション能力を育める点もポイント。考え方や価値観の違いによる衝突を乗り越え、お互いを理解し合いながら成長していける内容が学生たちから高く評価され、文部科学大臣賞の受賞に至った。
GIJのプログラムは、大学内での事前講義からスタートする。英語での講義を通して、学生たちはインターンシップやビジネスの基礎知識を身につけ、ビジネスマナーや異文化理解についても学ぶ。また、派遣される企業・団体について徹底的にリサーチを行い、事前プレゼンテーションを実施。事前講義をしっかり行うことで、学生たちは安心して10日間の就業体験に参加することができるのだ。
「多種多様なインターンシップ先を用意するのも、私たちがこだわったことの一つ。航空・製薬・旅行・教育・食品・医療をはじめ、幅広い業界で就業体験ができるほか、大手から中小まで規模感もさまざま。また、日系企業だけでなく、外資系企業も協力してくれています。大学がある関西が中心ですが、東京で開催されたものもあるなど、実施エリアもさまざま。インターンシップ先の幅広さは学生たちの視野を広げ、進路やキャリアの選択にも好影響を与えるでしょう」
学生たちが挑むビジネス課題も、インターンシップ先によってさまざまだ。ある大手菓子メーカーのインターンシップに参加した学生は、北米と日本市場での既存商品の新しい販売戦略の企画にトライ。また、大手航空会社のインターンシップに参加した学生は、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進するための研修資料の作成にチャレンジしたという。
「フィードバックの機会をたくさん設けているのも、GIJの大きな特徴です。まず、インターンシップ期間中は、派遣先のご担当の方々に日々の進捗確認やアドバイスを行ってもらいました。そして、最終日には学生のプレゼンテーションに対する講評を通して学生たちに新たな気づきを与え、さらなる学習意欲を喚起。なかには、社長など経営陣から直接フィードバックがもらえるところもありました。さらに、インターンシップ終了後には、大学で振り返りや課題解決に関するプレゼンテーションを実施。他の学生や教員からフィードバックをもらえるほか、自分以外の学生のプレゼンテーションを聞くことで、業界や職種に関する興味を広げていけます」
GIJの最大の特徴は、カナダの学生とペアを組んで企業・団体のビジネス課題を解決していく協働学習というスタイル。学生たちは、2週間にわたってホテルの同じ部屋で共同生活を行い、寝食を共にするという。ビジネススキルを磨けるだけでなく、異文化への対応力を磨けることも大きなメリットだろう。
「文化や価値観の異なる学生と共同生活を行うわけですから、食事や部屋の温度など、さまざまな理由で摩擦が生まれます。プレゼンテーションの内容を決める際などに、意見がぶつかってしまうこともありました。けれども、数々の困難に直面し、自分たちでそれを乗り越えていくことで、異文化コミュニケーションのスキルを磨くことができ、大きな成長を手に入れることができるのです」
GIJのプログラムに参加して、苦しい想いをする日本の学生も決して少なくないという。特に大きなネックになるのが、言葉の壁。英語を使ってビジネスの課題を解決していくという挑戦は難易度が高く、途中で挫折してしまいそうになる学生もいたそうだ。
「けれども、壁が高ければ高いほど、それをクリアしたときの喜びは大きくなります。最後は、涙が出るくらいの感動を得られた、という学生が少なくありません。参加学生からは、『さまざまなバックグラウンドを持つ人たちと一緒に働くことで、新たな気づきを得ることができて視野が広がった』『他人の意見やアイデアを取り入れて考えることによって、問題解決能力を高めることができた』といった声が届いています」
GIJは、リアルなビジネス課題に主体的に関われるだけでなく、日本にいながらグローバルな体験ができ、異文化コミュニケーションのスキルを磨くことができる独自性の高いプログラム。だからこそ、参加学生たちは同校が目指すグローバル社会の持続的な発展・成長に寄与する人材へと成長していけるのだろう。
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