2年前に開催された第1回『学生が選ぶインターンシップアワード』の授賞式を見学したのをきっかけに、アマダの採用担当者のお二人は、本格的なインターンシップの改革に乗り出しました。第2回でも応募したそうですが、残念ながら選外に。その悔しさをばねに、3回目となる今回は見事、優秀賞を獲得しました。受賞の喜びやインターンシップに対する取り組み方などについて、担当者お二人に伺ってみました。
斉藤 信さん/人材開発部副部長
山崎 梨恵さん/人材開発部 人材開発グループ 採用チーム
― 御社の事業概略を教えてください。
斉藤さん:2020年に創業74年を迎えたアマダグループは、B to B領域に軸足を置く「金属加工機械のグローバルメーカー」として活動しています。簡単に言えば“機械を作る機械”を作るのが私たちの役割。建材や家電、コンピュータ、スマートフォン、半導体など、金属を使った製品を作る企業(メーカー)に対して、高精度なモノづくりを実践するための金属加工機械を総合的な観点から提供しています。
技術的な特色としては、金属を融合したり、穴を空けたりする際に欠かせない「レーザ加工技術」、産業用ロボットなどを活用した「自動化」、AI・情報処理技術を駆使した「IoT」の3領域を得意分野に掲げています。中でもレーザに関しては1970年代から研究を開始し、日本で初めてCO2レーザ技術を確立するなど、文字通りの先駆者として走り続けてきました。現在は、レーザビーム制御技術の進化によって薄板~最大25mmまでの加工を実現させています。またIoT分野で言えば、サービスマンが現地工場に行かずとも壊れる前に故障を予期して対策を練ることができる「リモートメンテナンス」といった新しい試みにも果敢に挑んでいます。
金属加工機械業界は日本のみならず、欧米、中国などの名だたるプレイヤーがひしめく世界でもあります。アマダグループでは、レーザ、自動化、IoTという得意領域を柔軟に組み合わせながら、お客さまのモノづくりにイノベーションを巻き起こすべく日々、努力を重ねています。
― 必要となる人材も多様だとお伺いしました。
斉藤さん:その昔は技術系で言えば機械・電気出身者を中心に採用していましたが、自動化やIoTなどに深くかかわるようになった昨今、情報、物理・数学、材料科学などの知識を持つ人材も必要不可欠なものとなっています。また、管理部門や営業などには文系出身者も多く、文系・理系を問わない様々な人材に扉を開いてきました。
ただ、B to B業界にあるだけに、学生の認知度が低いのが大きな課題で、決して順調に採用できたわけではありません。特に近年は超売り手市場という状況であり、スマートフォンやSNSを上手に使いこなす学生たちのスタイルに対して、私たちが上手にキャッチアップできていないのも分かっていました。
そこで、約3年前に採用に関する中期3年計画を立案して、様々な改善策を講じていきました。インターンシップに関しては、大学からお願いがあった際に受け入れるといったレベルに留まっていましたので、まずは積極的にインターンシップを開催し、学生に対するアマダの知名度を上げていこうとしました。しかし、他社の事例を見よう見まねでインターンシップを開いてみたものの、集客の面でも、参加者満足度の面でも、私たちの期待以上の成果は得られませんでした。
― アワードが御社のインターンシップを変える契機となったそうですね。
斉藤さん: 2年前の第一回インターンシップアワードがまさに転機となりました。他社の事例を研究しようと表彰式の会場に訪れてみたのですが、各企業の優れた事例の数々に大いに感銘を受けました。実際、海外インターンシップを開催したり、150ものコースをそろえたりと、各社の取り組み内容は圧倒的でした。
こうした企業の話を聞いて、我々の思い描いていたインターンシップとの差を痛感しました。当社では“学生を集めるため”に開催していた部分が大きかったのですが、表彰を受けている企業は学生のキャリアに真正面から向かい合っており、壇上でスピーチしている姿が本当に格好いいと感じました。いずれ私たちもあの舞台に立ちたい――そんな思いを胸に会場を後にしました。
― どんな点から改善を進めていきましたか?
山崎さん:まずは「キャリア」「リアル」「つながり」の3つのキーワードを掲げました。当時、アマダが行っていたインターンシップは1Dayが主体でした。しかも、学生を“お客さま”として捉え、できるだけ多くの学生に参加してもらい、また、学生の喜びや満足度を上げていこうといった近視眼的取り組みに終始していました。
しかしながら、アワードに参加して、インターンシップは学生本人が将来のキャリアを開拓するために活用する場であるべきだと実感しました。プログラムを改めて見直していく中で、最初に上がったキーワードが「キャリア」。学生のキャリアのためのインターンシップを作るには、我々も専門性を高めないと答えは出せないと考え、他社の様々な事例を調査するのはもちろん、私の場合、キャリアコンサルタント資格を取得し、勉強を重ねました。
最終的には職場体験型インターンシップを、5日間(冬は2日)の日程で開催。現在は全38コースを用意するに至っています。さらに「インターンシップ事前説明会」を行ったり、あらかじめインターンシップを通して何を得るのかをしっかり目標設定してから参加してもらうことで、実際にインターンシップに参加したとき、自身のキャリアについて考えやすいように促しています。
インターンシップの最後にはモノづくりの未来をテーマに、経営陣を含めた社員たちの前で学生が発表をする場を設けています。発表があるのは事前告知しており、インターンシップでの経験を通して勉強を重ね、何度も考えを修正しながら、発表というゴールに向かってもらっています。
― 職場体験型プログラムに関しては、具体的にはどのような形となっているのでしょうか。
山崎さん:もう一つの改善のキーワードとして挙げたのが「リアル」。学生にとっては心の距離が遠い工作機械業界に関して具体的に知るプログラムを構築することで、自身のキャリアの近いところにある業界だと理解してもらうことを目指しました。そのために開発や生産はもちろん、管理部門なども含めたのべ300人の社員に参加してもらい、様々な角度からモノづくりを体験する38のコースを用意しました。これだけ選択肢があると企業が多様な部門から成り立っていることをわかりやすく伝えられますし、モノづくりの世界を立体的に捉えられるというメリットがあると感じています。
B to Bメーカーは遠い世界だとして捉えがちな文系の学生に向けては、普段はあまりオープンにしない経営企画や財務、人事などでもインターンシップを開催しました。これらの部署は俯瞰的に会社を見つめられる部門でもあり、間接的ながらもモノづくりをして行く上で重要な役割を担っているという理解を深める機会となりました。
斎藤さん:プログラム内容の一例を上げると、開発コースではスマートフォンのスタンド制作を通して、学生が自分で図面を描き、マシンを操作して完成まで導くというすべての流れを体験してもらいました。金属板は単に機械を操作するだけで曲げられるわけではなく、金属の向きやロットによって微妙な違いがありますし、温度や湿度によっても加工条件が変わります。文字通り職人技というべきノウハウが存在している点を体感してもらえたコースとなりました。
ちなみに人事のプログラムでは“ロボットコンテスト”の開催企画について進めていきました。今回が私たちにとって初めての自社開催だったため、学生たちと同じ目線で企画をまとめていくところから始めました。
― 社内のコンセンサスを取るのが難しそうですね。
山崎さん: だからこそ、3つ目のキーワードとして「つながり」を上げました。30以上のコースというと人事だけでは実現できるものではありませんから、他部門ののべ300名の社員の理解を進めるところからはじめました。しかし、お願いをするメールを投げたところで、現場は「自分の仕事があるので難しい」という発想になりがち。それでも諦めず、各部署に足を運んだりしながら、丹念にインターンシップへの思いを伝えていくことで徐々に賛同を得ていきました。
改革1年目のインターンシップでは30以上に講座を広げることができず、簡単ではないと痛感しました。しかし、参加した部署の担当者が自主的にプログラムを提案してくれるようになったり、「次のインターンシップはいつ?」という積極的な声を上げてくるようになるといった変化が生じました。社内でも成功した部署での評判が広がり、2年目になるとインターンシップの輪が一気に拡大していったという感覚です。
振り返ってみると、インターンシップを開催したことで、社員が「会社をいっそう好きになる」きっかけを作ることができたと感じています。学生に対して日々の仕事について話をしたことで、自分の取り組みが社会に役立っている実感を得たり、学生のフレッシュな視点から入社した当時の新鮮な気持ちに立ち帰ったりと、社員たちがキャリアの原点や拠り所のようなものを見出していきました。インナーブランディングを実践できたのが最大の副産物だといえます。
― 学生たちの反応はいかがでしたか?
斉藤さん:以前のインターンシップでは会議室に閉じこもってという形でしたが、職場体験型となった現在は、社員と同じフロアに席を設け、同じ環境の中で仕事してもらっています。学生の多くからは、本当に仕事をしている現場に入ることに感銘を受けたとの声が聞こえてきました。会議室で行うだけのインターンシップを受けて、なかなか企業理解が進まないという経験をしてきているようで、職場の中で一緒にゼロからモノを作ったり、アマダグループの裏の部分を見たりできるというのは新鮮に映ったようです。
採用にもプラス効果が出ており、インターンシップで具体的に会社の中身を見たので、安心して応募する学生が増えています。興味深いところでは希望者が少ない職種の、インターンシップの担当者が情熱的にプログラムを進めたことで人気が向上し、応募者が例年の3倍以上に膨れ上がったというケースが見受けられました。
― お二人はアワードへの思いが大きいようですね。
斉藤さん:アワードの受賞は私たちの念願でした。実は昨年、第二回アワードにも応募をしたのですが、あえなく落選。このときも授賞式を見に行きましたが、華やかな舞台に立つ企業の姿を見て非常に悔しい思いをしました。このときの経験をバネに第三回のアワードに向けては新しい要素を盛り込みました。
就業体験を軸とするのは変えず、事前と事後のプログラムを充実させたのが大きなポイント。事前の取り組みとしては『アマダインターンシップEXPO』と称し、アマダの各部署の代表がブースを構え、来場した学生にプレゼンテーションをしてもらう機会を設けました。また、インターンシップ選考に関しても、前年は人事が行っていたのですが、今回から各部門の担当者に受け入れたい学生を自分で選んでもらいました。まだ手探りだった1年目に比べ、2年目では社員が一緒にインターンシップを作るという姿勢が定着しているのもわかり、新しい風土や文化が築かれたとの手応えを得ています。
事後のアプローチとしては、フォローアップする場である『インターンシップMeets』を開いています。開催時期は夏インターンシップの約3ヶ月後。単なる就業体験で終始させず、再度成長を確認し、将来像を共有することを目的としています。こうした刷新も今回の受賞につながったのだと思います。
― 改めて受賞の感想をお聞かせください。
山崎さん:「これで受賞できなかったら、永遠に受賞できない」くらいの気持ちで熟考を重ねてきたつもりです。社内的には多くの部門の方たちに関わっていただき、準備等で大変な思いをさせてしまったかもしれませんが、その努力に報いることができたのではないかと思っています。
斉藤さん:ただただ嬉しいと感じると同時に、インターンシップの改善に挑んだ約3年の月日は、自分たちの成長への戦いだったとも感じました。何度もトライ&エラーを繰り返し、プログラムをより良いモノにしていくというプロセスの中では、メンバー達のキャリアの糧になる多くのものが得られたように思います。何よりも従業員がインターンシップを通して働く喜びを得て、笑顔になっている様子を見るのが嬉しいですね。学生だけでなく、お互いが学びを通じて成長し合える組織風土へと変革できたことに、人事としてのやりがいを感じました。
― アワードに期待するものはございますか?
山崎さん:最近、キャリアオーナーシップの重要性が高まっていますが、若い方々にとってその最初のきっかけとなるのがインターンシップではないでしょうか。アワードが、キャリアを考えるきっかけとして作用するインターンシップを広げていくための重要な役割を担ってほしいと思います。
斉藤さん:アマダのインターンシップは、実はアワードに登場する多彩な企業の成功事例をもとに構築されています。我々のインターンシップはまだまだ十分ではありませんが、アワードを通して他社のいいところをどんどん吸収して、お互いに切磋琢磨しながらより良いプログラムを構築していければ幸いです。
「学生が選ぶ
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