三条市立大学 受賞レポート

地域のものづくり企業163社と連携!
22週間の革新的な長期実践プログラム

三条市立大学は、新潟県三条市に位置する工学部を擁する公立大学。5年前に設立したばかりの新しい大学でありながら、「技術開発して、イノベーションを創出する”イノベーティブテクノロジスト”を育成する」という明確なビジョンを掲げている。長期的に燕三条地域を中心としてのものづくり環境に身を置き、課題に取り組む『BE INNOVATIVE TECHNOLOGIST~地場で学ぶ産学連携実習~』が、その革新性と教育効果の高さを評価され、文部科学大臣賞を受賞した。

産学連携実習は、通常カリキュラムに位置付けられており、単なる就業体験ではなく、学生の成長段階に応じて体系的に設計された「事前学習(KBL:Knowledge-Based Learning)」「事中学習(EBL:Experience-Based Learning)」「事後学習(PBL:Project-Based Learning)」の3段階の学習サイクルを、2・3年次で計22週間にわたって実施する実践型のプログラムだ。企業の現場で実際の技術開発や製造に携わりながら、学生も多くの学びを得られる産学連携の成功事例として、文部科学大臣賞の受賞につながった。
「学術的な知識の取得はもちろんのことなんですが、地域のものづくり企業での実践的な技術や生きたマネジメントを経験する計22週間の産学連携実習プログラムが私たちの学びの特徴となっています」

3D CADやモデリング技術、企画開発、製造まで、163社の企業と連携してプロジェクトが進行。158名という多数の学生が参加し、それぞれが自身の興味と適性に応じた学習機会を得ている。産学連携実習は、カリキュラムの中核をなす授業科目であると同時に、日本トップクラスの長期的な産学が連携する実習プログラムへと大きく成長を遂げている。

俯瞰的な視線を持ちつつ、理論と実践を
融合した3段階の体系的な学習サイクル

一般的なインターンシップと産学連携実習の大きな違いは、、事前学習から実践経験、そして振り返りの事後学習までを体系的にサイクル化している点。まず実習前の事前学習段階(KBL)では、知識取得に重点を置いた教育を徹底的に実施する。

「この段階では、地域をよく知るための様々なアクティビティや、技術者としての倫理観養成、情報セキュリティ対策を学習します。特に重要視しているのは、守秘義務や秘密保持の考え方です。企業の現場に入る学生として、これらは必要不可欠な知識となります」と説明されるように、実践的でありながら責任ある学習態度の醸成に力を入れている。

続く事中学習段階(EBL)は、経験に基づいた学習として位置づけられている。
「多様な体験・経験から気づきを得ることが目的です。その気づきを活かして、さらなる知識を取得したり、あるいは知識と知識を融合して新しい知識や新しい用途を作り出すことにフォーカスしています」
そして事後学習段階(PBL)では、経験を学びに変換させる活動として、徹底的な振り返りと分析を通じて、学習成果を学生自身の武器として定着させるプロセスが用意されている。
「重要なことは知識を取得することよりも、その知識を活かして価値を創出することです。知識を点として捉え、経験を施すことによって点と点が線につながります。多様な経験から多様な面を作り上げていくことで、イノベーション創出能力を育成しています」

産学連携実習の一番の特徴は、あらかじめ用意されたプロジェクトに挑むのではなく、学生たちが主役となって知識と経験を往復しながらイノベーションプロセス全体を理解していくところ。企画開発から製造まで、リアルな現場の第一線で社会人さながらの活動をするという、かけがえのない経験ができる。「例えば、卒業した学生が品質管理の仕事をしたとしても、全体を俯瞰した上で品質管理することの意義と、品質管理しか知らないで品質管理している意義が、人材としての価値の違いが違うのかなというふうに思っています」

学内のプロジェクト演習「PBL」と
地域現場で学ぶ「EBL」を相互に活用

同大学が独自に開発した螺旋型学習サイクルでは、学生の継続的成長を支える革新的なカリキュラム設計として注目を集めている。
「学内では知識を取得し、学外では企業での経験から気づきを得て、そしてPBLを通じて振り返るというプロセスを繰り返していきます。このように、PBLとEBLを往復しながら学ぶ”レシプロカル型”の学習スタイルが、本プログラムの特徴であり、学生の成長の鍵となっております」

大学でのカリキュラムの流れは、プロフェッショナルとしての成熟度合「PRL(Professional Readiness Level)」に応じて綿密に設計されている。PBLでは、単なる技術的知識の習得にとどまらず、ケーススタディを活用した実践的問題解決能力、論理的思考力、高度な分析スキル、コミュニケーションやリーダーシップスキルを身に着けていく。合わせて技術者として不可欠な職業倫理観も総合的に身につけていく。

1年生前期の「プロジェクト演習I」では、学内で課題解決の基礎をPBL形式で学ぶと同時に、EBL「燕三条リテラシ」を通じて地域企業の現場を直接見学することで、社会への理解を深めていく。2年生後期には「産学連携実習I」を実施。3つの異なる企業で各2週間ずつ、計6週間という期間で、アイデア作り・技術開発・製造現場まで幅広い業務を経験し、自身の適性を見極めていく。
その後、3年生後期には「産学連携実習Ⅱ」として、より本格的で集中的な学習が展開される。ここでは1つの企業において計16週間、自身が見極めた適性に重きを置いて、経験学習を実践的に行う長期実習が実施される。実習前後も、プロジェクト演習を行うことでこれまでの経験を整理し、学びに変換して学修を深化させていく。

プログラムの継続性と学習効果について、担当者は次のように語る。
「実習後もプロジェクト演習を行うことで、これまでの経験を整理し学びに変換していきます。このように4年間の学びの中で大学と企業を行き来しながら、着実に知識とスキルを身に付けられるよう、カリキュラム設定がされております」
「学生たちは、世界でも有数なものづくりの集積地である、燕三条地域を中心とした、 163社の魅力的な企業の現場で実習を行っております。本学は、実習を通して得た経験を、 学内で習得した理論やスキルと結びつけることで、高度なものづくり人材である、 イノベーティブテクノロジストの育成に努めております」

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