地域志向型インターンシップ ネットワーク
inいわて/横浜国立大学/駿河台大学/岩手大学
受賞レポート

地方での「働く」と「暮らす」を合宿で実践的に体験、
地方での就職という選択肢を早期から創出する

地域×キャリアデザインプログラムinいわては、岩手県内6つの地域で実施される合宿型プログラムであり、首都圏の学生が地方の働き方や暮らしを体験し、都市部偏重の就職観を超えた将来の選択肢を低学年次から広げることを目的としている。

キャッチフレーズの「岩手で働くことは岩手で暮らすこと」は、企業・業界を知ってもらうことにフォーカスしていた従来のプログラムとは異なり、地域社会特有の「働くこと」と「暮らすこと」の距離の近さを実感してもらうことに重点を置いたプログラムであることを示している。このプログラムでは、通常のインターンシップが企業と学生の2者間で成立するのに対し、自治体も介入している点が大きな特徴だ。中小企業の受け入れ負担を肩代わりする地域コーディネーターの設置や、参加者の交通費や宿泊費などの費用負担補助を自治体が担うことで、学生と企業双方の参画を促進する狙いがある。

その結果、地方創生や一次産業、エネルギー問題などの社会課題に実践的に触れることで、地域の特徴を活かした働き方と暮らしを学ぶ機会を創出した。大学と地域の連携により、横浜国立大学、駿河台大学、岩手大学の全学部対象の授業科目の中で正式に単位化もされている。

このように次のステップアップにつながる仕組みも整備されたことで、低学年からの地方理解と経済産業への貢献が両立しているプログラムとして、高い評価を得ることとなった。

6つの自治体で行われた
幅広い分野での就労体験をもとに
「地域で働く」ことの意義を再認識

昨年2024年には、8〜9月にかけて二戸市、一戸町、葛巻町、岩泉町、宮古市、雫石町の6つの自治体でさまざまなプログラムが実施され、合計73名の大学生が参加した。各自治体では、地域の企業及び団体での研修や地域住民との交流会が行われ、学生たちは実践的な体験を通じて地域の課題に触れた。

例えば、岩泉町では、龍泉洞黒豚ファーム、 岩泉ホールディングスなどで研修を行い、 地域の経営者や、 若手役場職員の話を聞く会などを実施。葛巻町では、葛巻高原牧場、葛巻ワインなどの協力で研修を行ったほか、町長講話や地域住民との交流会、先輩と語る会を開催した。企業による研修以外にも、各自治体ごとにさまざまなプログラムやイベントが企画されていた。二戸市では、勤務終了後の従業員の方との交流や地域課題を考えるワークショップを開催。雫石町では、移住者の話を直接聞くことのできる交流会に加え、地域イベントの運営スタッフなどを体験できるプログラムも実施された。また、一戸町では、一戸夢ファームでの農業実習のほか、町内の農業施設を見学し、新規就農者の話を聞く、といった貴重な機会が設けられていた。宮古市では、市内の事業所に対し、働いている方へのインタビューや現場見学などを行う「取材型インターンシップ」が実施された。このように、各自治体ごとの個性を活かしたプログラムを体験することで、地域社会を多角的な視点から考える機会を創出した。

参加した大学の1〜2年生たちは、各地域で暮らし、働き続けているさまざまな人々との交流をきっかけとして、首都圏では体験できない実践的なプログラムを体験することができた。これらの体験が自分自身のストーリーとして蓄積されることで、多様な価値観を形成し、将来の選択肢を増やすことにつながることが期待されている。

体験終了後のディスカッションや情報交換で、
個々人の経験を蓄積し、
次のステップへと進む足掛かりを作る

6地域での体験終了後、各大学では、参加学生によるディスカッションや情報交換を経て、自身に生じた変化を言語化し、改めて自分の経験として蓄積する機会を設けた。本プログラムを取り入れている横浜国立大学では、20年前から実施している学部副専攻プログラムの地域課題実習プロジェクトの一つとして2022年度より岩手らばーずが活動を始めた。岩手らばーずの学生は、本プログラムへの参加をきっかけとして、 3月11日前後に、三陸地域を訪れたり、大学祭で岩手の産品を販売するなどしている。駿河台大学では、アウトキャンパススタディ科目の1プロジェクトとして位置づけており、冬にワーキングホリデーの形で地域を再訪する、といった活動を展開している。

これら首都圏の大学では、東日本大震災以降、遠方の学生が地域での長期インターンシップを行ってもその経験を大学で共有しにくく、次のステップにつながらないという課題があった。しかし、本プログラムを終えた学生たちが、各地での体験を話し合い、共有する場面が増えたことで、上記の課題に改善が見られた。一方地元の岩手大学はCOC+活動の一つとして2016年当初から本プログラムに参画しており、2023年から全学部対象共修プログラムの中で事前学習や事後フォローも含め、授業「キャリアデザイン実践」として正式に単位化され、さらに多くの学生が参加できる地盤を築き上げた。

プログラムに参加した学生たちには、「自分たちに何かできることはないか」といった地域貢献の意識が芽生えはじめており、家族や友人と岩手を再訪したり、SNSで情報を発信したり、各々が自発的な行動に移っている。2025年度の参加学生の募集もすでに始まっており、学生たちは後輩に自らの体験を力説し、プログラムの魅力をPR中だ。10年近く続くこのプロジェクトは、各地域が切磋琢磨することで進化を続けており、今回の受賞を皮切りに、さらに魅力的なプログラムへと展開していくだろう。

「学生が選ぶ
キャリアデザインプログラムアワード」
運営事務局

MAIL:job-internship-award@mynavi.jp
job-isaward-gakusei@mynavi.jp(学生用問い合わせ窓口)
TEL:03-6267-4531(受付時間:平日10:00 - 17:00)