70年以上の歴史を持つ株式会社エービーシー商会は、建築土木資材やファッションインテリア資材の卸売り、輸出入など、建築に関する幅広い事業を展開している専門商社兼メーカーだ。「エービーシー商会の商品の上を歩いたことのない人はいない。」という企業キャッチコピーのとおり、商業施設や学校、テーマパークに至るまで、日本中のありとあらゆる場所に同社の商品が使用されている。
低学年キャリアデザイン賞を受賞した「What types of jobs does the KAISHA consist of?~会社はどのような仕事で構成されているのか?~」は、大学1、2年生が多様な職種の理解を深めながら早期キャリア形成の展望を促す4日間のプログラム。10以上の職種の社員と直接対話しながら、部署間の繋がりや業務の体系を学べる点が魅力だ。学生は社員へのインタビューを自ら企画・実施し、得た情報を学生同士で意見交換しながらまとめ、プレゼンテーションを行う一連のプロセスを体験した。運営に携わった株式会社エービーシー商会 人材開発チームの清澤 俊介さんは次のように語ってくれた。
「プログラムのテーマは『仕事研究を通して自身の適性を考えよう』です。弊社をモデルに、学生の方がイメージしにくいB2B企業の仕事内容について、理解を深められるプログラムになっています。1つの会社の中に多くの職種が存在することを理解しながら、自身の適性や興味のある分野を探るという流れで進めました。幅広い視野を形成することで自身の興味関心がどこにあるのかを明らかにし、将来の選択への基盤を築いていただくことができます。 プログラムの最後には社員インタビューやワークを通して、対話力や協働力といった社会人としての基礎力を養っていただけます」
学生は全5段階のステップに沿って、自身の適性や希望に向き合いながら、今後興味のあるインターンシップ先を選択することができるようになる。主体的な学びと段階的な学習設計により、低学年からのキャリア展望の形成を支援する模範的なプログラムとして、多くの学生から高く評価された。
4日間という限られた期間の中で職種・企業理解を深めるために、プログラムは前半2日間、後半2日間という構成で行われた。最初の段階で、学生は職種をリサーチし、仕事内容について仮説を立ててからインタビューを実施、プログラムの後半でインタビュー内容を学生同士で伝え合い学びを深めた。企業側は名前はよく聞くが実際の業務内容は知らない職種や、初めて名前を聞くような職種を織り混ぜた全10職種とのインタビューをセッティング。全職種の知識を得た上で、それぞれの仕事の繋がりを知り、実際に働く人たちの声を聞くことができるため、働くことへの解像度を徐々に上げながら自分自身の興味と向き合えるのだ。
「弊社エービーシー商会は23年間にわたり、実務実践型のインターンシップを実施してまいりました。昨年度は38名の学生の方にお越しいただきましたが、残念ながら採用に有利という目的以外でインターンシップに参加している学生の方は少なく感じられました。しかし、それは学生の方々がインターンシップ先を選ぶ基準をしっかりと考える機会がないからだと思いました。学生の方が3年生の長期休暇という貴重な時期を使ってインターンシップに行くのであれば、インターンシップ先を選ぶ前に自分の興味範囲や適性を測り、将来について考える機会があることが望ましい。そのような思いから、学生の方々の将来選択をサポートできるプログラムを実施しました」
プログラムの後半では、学生同士でお互いの学びを共有し、深めあう機会を設けた。グループごとにインタビューで得た情報を伝え合い、アウトプットするワークを行った。自分で得た情報をアウトプットすることで、漠然としていた仕事のイメージと実際の仕事の違いを確かめ、将来のイメージを明確化できるようにしている。
「それぞれの仕事はどのように繋がっているのか、会社はどのような仕事で構成されているのかを考え最終プレゼンテーションを行います。仕事は自分だけでは完結しないこと、そして自分の仕事の先には必ず相手がいることを実感しながら、働くことへの理解を深めます」
4日目の最後に学生はフィールドワークと内省を行った。フィールドワークでは都内にあるエービーシー商会の施工実績へ足を運び、仕事の成果がどのように街に残るのか実際に見学した。内省では今回のプログラムで自身が興味を持った分野や、やってみたい仕事について自分自身と向き合いながら振り返りのワークを行った。参加した学生からは、プログラムを通して就職活動の指針が見えたような気がしたと好評だった。
「私たちが実施前に掲げていた将来選択のサポートをするという点については達成できたのではないかと考えております。しかしながら課題もございました。企業研究が進むにつれて、多数の学生から実務体験の希望が上がった点と、インタビューに苦戦する学生がいらっしゃった点です。この課題を踏まえ、本年度はプログラムを4日間から5日間へアップデートします。インタビューの方法レクチャーと半日の仕事体験を加え、より学生の方々に将来の可能性を探求していただけるようなプログラムにしてまいります」
大学生の企業インターンシップが一般的になりつつある一方で、そのノウハウはまだ十分に発達しておらず、漠然としたイメージでインターンシップ先を選んでしまう学生も少なくない。そうした中で、事前に企業理解や自己理解を深めることのできるこのプログラムは、将来設計を考える上で不可欠な新しいスタンダードとなる可能性を秘めている。
「学生が選ぶ
キャリアデザインプログラムアワード」
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