福岡県北九州市にある北九州市立大学は、5学部1学群、4大学院研究科からなる総合大学。文部科学大臣賞受賞に輝いたインターンシップを実施している地域創生学群は、「地域の再生と創造を担う人材を育成する」という教育目標を掲げて、2009年に創設された。「実践と理論の両立」という教育理念のもと、通年の実践活動を必修科目として単位化しているのが特徴だ。
「地域創生学群チャレンジプログラム」は、2015年にスタートした3年生向けの実践活動プログラム。「起業トライアル」と「リアル就職」という2つで構成されており、「起業トライアル」では自ら考えた事業を約9ヵ月間オウンリスクで実施する。「リアル就職」では、5ヵ月間にわって週3~4日のフルタイムインターンシップを実施。この8年間で合計79名の学生がこのプログラムに挑戦し、受け入れ先の企業は32社にのぼるという。
若者と仕事と地域をつなぐ事業を展開している一般社団法人フミダスとタッグを組み、手厚い研修やフォロー体制を整えているのが特徴。学生が失敗を恐れず挑戦しやすい雰囲気づくりをはじめ、随所に工夫がみられる好例プログラムとして高評価を獲得し、文部科学大臣賞に輝いた。
会場で文部科学大臣賞受賞の発表が行われ、スポットライトを浴びたのは、プログラムの企画・運営に携わってきた片岡寛之教授。「驚きとうれしい気持ちでいっぱいです。今回の受賞は、思いきりチャレンジしてくれた学生たちと、その挑戦を受け止めてくださった企業の方々のおかげ。8年間続けてきたことを評価していただき、非常にうれしく思います」と、喜びを語った。
フルタイムインターンシップである「リアル就職」の具体的なプログラム内容は、受け入れ先と学生の間で直接話し合って決定。ただ、ルーティン業務だけでなく、プロジェクト型の仕事を与えるよう、同校が受け入れ先に働きかけている。なかには、学生がやりたいことや挑戦したいことを丁寧にヒアリングしたうえで、担当業務を決定した団体もあったという。
「学生たちは、新入社員と同じような状態で5ヵ月間を過ごします。そのため、多くの社員さんと関われるのがメリット。受け入れ先の規模によっては、経営陣と近い距離で働けるケースもあります。長期間にわたって社員と同じように過ごすことで、自分の得意なこと、やりがいを感じる瞬間、働くうえで大切にしたい軸など、多くの発見を得られるのが特徴。また実践を通して、失敗力・言語化力・当事者創造力・やり抜く力・巻き込み力を育むことができるプログラムです」
いきなり一人で企業に飛び込み、実践的な業務を行うことは、学生たちにとってかなりハードルが高い経験だ。そこで同校では、事前にしっかりと準備期間を設けている。例えば、2年次の終了時に、一般社団法人フミダスによるリーダーシップ研修を実施。学生たちは、職業観やデザイン思考などに関するレクチャーを受けたうえで、今後の大学生活や社会に出てからの姿をイメージした“自分事業計画”を作成する。
「また、3年次1学期の科目(地域創生特講)をインターンシップに向けた準備科目と位置づけ、ゼミのような形で物事の捉え方や仕事、働き方、マネジメント、プレゼンなどに関するディスカッションを実施。その繰り返しによってチームビルディングを行いながら、マインドセットを図り、最後にもう一度フミダスさんによる研修を実施してから、インターンシップに送り出すというステップを踏んでいます」
インターンシップ期間中も、同校と一般社団法人フミダスが学生一人ひとりにしっかり伴走する体制を構築している。まず、インターンシップのスタートから1ヵ月後には、モチベーションの変化を確認し、振り返りを行う1ヵ月後研修を開催。3ヵ月後には、前半の振り返りと残り期間の目標再設定を行う、ギアチェンジ研修も用意している。
「インターンシップが終わってからは、2日間かけて終了研修を実施。徹底的に“経験の言語化”を行い、教員やコーディネーター、学生相互のフィードバックを通して、自分自身の挑戦に対する意味づけをしてもらいます。これにより、自分が働くうえで大切にしたいことや就職活動の軸が、よりクリアになっているようです」
実際、プログラムに参加した学生たちは、働くことに対する考え方が大きく変わったという。「目の前の課題や目標に対して、成果という形でどう存在価値を発揮していくことが大事なのかを考えるようになった」「誰にどんな価値を与えられるのかを意識して働くことが、楽しいと感じるようになった」という声は、ほんの一例にしか過ぎない。
「地創のインターンシップは、学生たちにとって徹底的に考える場であり、自分や社会と真剣に向き合う場であり、かけがえのない仲間ができる場です。本気でひとつのことに打ち込み、挫折や失敗を乗り越えて最後までやり抜くことで、大きく成長できることが、一番の魅力だと考えています」
『地域創生学群チャレンジプログラム』での経験は、学生たちにとって今後の人生における大きな力になるはず。就職という観点だけでなく、教育という観点からも大きな効果が期待できるプログラムである。
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