旭建設株式会社優秀賞 「人・街・未来を創造する ー建てる仕事ー」

旭建設株式会社

過半数の社員がインターンシップに協力

旭建設株式会社は、千葉に拠点を置き、今年で80周年を迎える建設会社。社員の半数以上が建築系の資格を持つエンジニアであることが強みだ。「『ありがとう』と言われる会社に」をビジョンに、お客さま、協力会社、社員同士が感謝をし合える職場作りを行っている。

今回表彰されたインターンシップ「人・街・未来を創造する ー建てる仕事ー」では、従業員96名のうち約40名がインターンシップに携わるという中小企業としては驚きの社員協力率の高さを見せ、丁寧に深くフィードバックを行っている点が高く評価された。具体的には、「実習ノート」を用いて日々の疑問に対する回答を行う、適性テストを用いて自己理解促するなど、多面的にフィードバックを実施。導入研修を経てリアルな現場体験をできることは、業界を志望している学生にとって貴重な経験であり、一連の業務工程を経験することで働くイメージがしっかりと形成されるプログラムになっている。中小企業の受け入れ事例として、模範的なインターンシップであることが受賞理由だ。

プレゼンテーションを行ったのは、建築部・小林颯登さんと管理部・西田文子さん。実際に学生の受け入れを行っていた部署の社員からのプレゼンテーションは、活力に溢れていた。まずは西田さんがインターンシップの概要について説明した。

「今回受賞したプログラムは、施工管理職の実際の現場を体験してもらうというものです。『未来が輝く仕事をしよう、10daysインターンシップ』をスローガンに掲げ、仕事を通して自分の未来を明るく輝かせようという思いを込めました。開催時期は、夏休みを利用した8月から9月の、土日とお盆休みを除いた10日間です。総受け入れ人数は合計22名。広報手段は、ナビサイトおよび単位認定校との連携です。グローバルに広報することができるナビサイトへ掲載した影響は大きく、ナビサイトにより海外の大学に通う建築系2年次生の受け入れも叶いました。受け入れ過程において大切にしているのは、学業優先です。社会を学ぶプログラムではありますが、学校の授業やテストを第一に行動していただく個別対応も柔軟に行っています。学生には一社でも多くの企業を実際の目で見て体験し、本当にやりたいことや自分の輝ける場所を見つけてほしいと願っています」

詳細なプログラム内容は現場社員に一任

続いては、今年で入社3年目となる建築部の小林さんが具体的な内容について発表した。オリエンテーションを終えた2日目からのインターンシップは、小林さんのような現場社員に大きく権限委譲し任されるのだという。

「学生の受け入れに携わる若手社員は全員、学生の模範となるよう姿勢や心構えに関する受け入れ前研修を受けています。そこではルールや指導資料なども共有され、当日までに現場での実習スケジュールを本社へ提出します。プログラム内容は、まず実習に入るにあたり、どんな目標を持って何を学びたいのかを、学生が応募したきた際の資料に基づき、現場で個別に2度ヒアリングを行います。例えば、最終日のアンケートで『設備に興味がある』『仕上げ工事が見たかった』『他の現場の工事も見たかった』など書かれても、終わってからではフォローできません。そのため、初日と中間でヒアリングを実施するよう改善しました」

実習内容を現場に一任しているのは、施工管理は天候にも左右されたり、現場によって工事の進捗がまったく異なるからだ。内容に関する権限を委譲する代わりに、心構えや意義といった核となる部分の共有は徹底的に行った。小林さんは、コンテンツについてこう続ける。

「現場ごとに進捗状況が異なるため、私たちに内容は一任されていますが、その基準として『自分だったらどうして欲しいか』をすべての根底に置いていました。学生に最も近い若手社員として考え、指導にあたっています。具体的な内容としては、例えば現場の朝礼での発表。多いときでは100人を超える協力業者様を前に、当日の工事内容を説明します。人の前に立つことで、多くの人の協力のもとに仕事が成り立っていることや、責任感を感じてほしいと思い、全ての受け入れ現場で実施しています。また雨天時には、実践的な図面の活用方法や製図について指導しました」

建築業界のIT化が進んでも
人との繋がりの重要性は変わらない

学生には実習ノートをオリエンテーション時に手渡し、当日の学びや振り返りを記入してもらう。記入時間は毎日1時間程度確保していたという。当日学んだ内容と現場で聞けなかったこと、質問などを学生が記入し、学生の学びや質問に対し、メンター社員が返事を書くことになっている。小林さんは、昨年実際に使用したノートをスクリーンに映し出しながら、こう振り返った。

「昨年はメンターの私だけでなく、所長のコメントも記載していました。このノートは、成果発表資料や実習後レポート作成にも役立ったと学生から聞きました。翌朝、学生が出社してくるまでにコメントを記入するので、一度に5名の学生を担当していたときはその作業だけで1時間ほど掛かっていました。しかしノートの中では私も知らないことを問われることもあり、私自身も勉強している気分でした。社会ではIT化が進んでおり、それは建築現場でも同様です。ITやAIの発展による業務効率化が進んでも、最も気にしなければいけない人と人との繋がりを、ノートでのコミュニケーションを通して実感しました」

若手社員の声を積極的にコンテンツに反映

10日間のインターンシップ最終日は、実習で学んだことを一人5分程度で発表する成果発表の場を設けている。ヒアリングの際に設定していた目標を達成できたのかを、社長や部門長・メンター社員の前で発表するというもの。また、適性検査を実施し結果を学生自身に送ることで、自己分析や進路の決定に役立ててもらっている。最後に、管理部の西田さんはインターンシップ全体を通して工夫した点をこう語った。

「とにかく若手社員の声をもとにプログラムを作成しました。例えば『一人の社員だけが指導にあたると、内容に偏りが出てしまうのでは』、『職人とも話す機会を作りたい』、『大工をやりたいとか、設備に興味ある人もいるのでは』といった声など。それぞれの意見を、実際に取り入れてみようとする柔軟な姿勢が高評価につながったのではないかと考えています。今後も学生や現場からの声に真摯に耳を傾け、プログラムのブラッシュアップを行っていきます」

学生アンケートでは、「①コミュニケーションの大切さを感じた」「②業界・職種に対する意識」「③働くやりがいや充実感を知る事ができた」という項目が上位に。自由記入欄には、「自分の目指す就活の方向性が見えた」「若手社員の方からの楽しい話や悩みなどがリアルで、就活の相談まで聞いていただけた」といった声が寄せられた。これらの言葉や学生の笑顔が、同社がインターンシップを毎年開催するモチベーションになっているという。社員を巻き込む中小企業のインターンシップの好事例として、多くの企業の模範となるプログラムだろう。

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