多様化・複雑化する世の中のリスクと向き合い、人々の挑戦を支えるあいおいニッセイ同和損害保険株式会社。1918年の設立以来、「インフラのインフラ」と言われる損害保険を中心に、グローバルに保険・金融サービス事業を展開してきた。渋谷区恵比寿を本拠地に置き、国内では626箇所、海外では33都市に拠点を構える。
「エグゼクティブ密着インターンシップ『BOSSのカバン持ち』」と銘打った本インターンシップは、インターンシップではあまり交流できないマネジメント層のそばで実務を体験できる。また実務体験が難しい事業内容でありながら、2,500人を超える社員の協力のもと、実際の業務を体感できる5日間のプログラムだ。なおかつ、ただ学生を現場に送り出すだけでなく、「自己理解」「業界・仕事理解」「ビジネスマナー習得」といったコンテンツで丁寧にフォローし、学生の成長を促す工夫がなされていた。特に自己理解のパートでは、学生自身が価値観を探求するプロセスが、新しい自分の発見につながったという声が多く聞かれた。個々に対するフィードバックも丁寧で、各コンテンツの設計や一連のストーリー作りに、綿密な設計がなされている点などが高く評価された。
プレゼンテーションを行ったのは、人事部採用グループ主任の永瀬安梨さん。永瀬さんは「インターンシップを通して、学生が新たな自分と発見できるような機会を創出できるよう心掛けてきました。このような賞を頂いたことを追い風に、今後もより良いインターンシップを追求していきます」と喜びを語った。
「BOSSのカバン持ち」は2011年度から始まり、今年で9年目を迎えるプログラムだ。
開催時期は2月で、日数は最大5日間。2018年度は35地域・248拠点で開催した。2011年度に始まった当初は大都市圏のみでの開催だったが、地方学生へ配慮し、2017年度から全国の都道府県でも開催するようになった。インターンシップへ巻き込んだ社員数は、なんと2500人にものぼる。
永瀬さんはインターンシップのねらいをこのように据える。「昨年は355名の受け入れを実施いたしました。インターンシップのねらいは、一つ目に、損害保険の第一線を知ってもらうこと。二つ目に、多角的に自分自身を見つめ直してもらうこと。三つ目に、働く意味を考えてもらうことです。それらを念頭に置き、プログラムを作成していきました」
5日間のプログラムのうち、1、2、5日目は集合研修で、3、4日目が現場研修だ。首都圏では人事部が運営をするが、地方の営業店や損害サービスの現場社員が運営をする形をとっているという。1日目と最終日は自己分析を行う。現在・過去・将来、3つの切り口から自分の出来事と感情を見つめ、価値観を探求していく。自己分析は一人でできるものと考えがちだが、同社で行うことで新たな一面を見つけられるよう、方法にも趣向を凝らしている。
「まず90個のワードを並べます。その中で直感的に自分自身が大切にしている言葉を選んでもらい、なぜそれが大切なのかを突き止めてもらいます。そこで言語化できないようであれば、また別のワードを探しにいってもらう。これをひたすら繰り返します。
自己分析というと、『自分はこういう人間だ』と決めつけてしまい、凝り固まった見方が定着している可能性も当然あります。そこを客観的に見つめ直すためのきっかけにしてほしいという思いを込めています」
2日目はビジネスマナー。3、4日目の現場研修に備え、挨拶・敬語・身だしなみ・名刺交換・電話対応など、実践を交えながら練習を行う。特に電話入れに関しては、3、4日目に受け入れ予定の所属長に「明日はよろしくお願いします」といった電話を掛けさせる。3、4日目は社員と同行してパートナーの代理店に訪問する機会を設けているが、そこでも代理店との名刺交換の実施を必須にし、実際のビジネスシーンをイメージしやすい設計としている。
損害保険は、学生にとっては馴染みのない商品だ。そのため「営業体感ワーク」という実際のケーススタディを用いた、リアルなシチュエーションのグループワークを設定。少しでも業務を身近に感じてもらうための取り組みだ。リアリティがあるのはシチュエーションだけではない。チームごとに異なるテーマを設定しているのだ。
「なぜ私たちが異なる問題を出してるのかというと、『ビジネスの答えは一つではない』ということを伝えたいからです。一方で、正解はなくとも『いつも変わらない本質がある』と伝えていきたい。そのために、こういった形式でのワークを行っています。学生さんはどうしても、正解を求めがちです。正解を探すためにワークに取り組むのではなく、正解のない中でも、少しでも損害保険の可能性や思考の幅を広げていってもらえたらという期待を込めています。
全体を通して意識しているのは、小さなワークと大きなワークを繰り返していくということです。つまり、インプットとアウトプットを反復する機会を創り出すことです。具体的には個人ワークを実施すると、必ずグループで共有する時間を設けます。これを繰り返すことで、自分の意見を発信する力や他人の意見を受け入れる受容力を養ってもらいたいと考えています」
メインとなる3、4日目の現場配属。人事部は、数カ月も前から準備を重ねているという。選考の際に学生から希望を聞き、受け入れ先となった職場には1カ月ほど前から受け入れの準備を開始する。必ず実施してほしいコンテンツ、相互理解のための機会、フィードバックなどを設けるよう、2,500人の社員の協力を仰ぐ際に、職場ごとにクオリティの差がつかないよう配慮している。
「相互理解のために、所属長と学生の双方にプロフィール紹介シートを配布しています。所属長には社会に出てから挫折したこと、達成感を感じたことなどを学生に伝えられるよう準備してもらいます。学生にも、中学・高校・大学という経験を振り返り、自分の人生に影響を与えた出来事をピックアップして書いてきてもらいます。こうしたツールを事前に用意しておけば、インターンシップに慣れてない職場でも段取り良く進めていけるだろうという目論見です」
受け入れ体制の特長は、少人数であること。そして「エグゼクティブ」を謳うくらいなので、所属長との距離が近くなるよう設計されている。フィードバックについても、工夫を凝らす。フィードバックというと、悪い箇所を指摘し、改善させる方向性に向かいがちだ。しかし同社では、良い点をとにかく褒めることを意識している。インターンシップに必要なのは、自信を失わせることではなく、「ここでならやっていける」と自信を身に付けさせること。この点でも職場ごとにムラが出ないよう、「強み・弱みのフィードバックシート」という共通のフォーマットを使用している。
プログラム全体を通して心掛けたことは4つある。一つ目は、アクティブラーニング。能動的に考える環境を提供できることを常に念頭に置いた。二つ目は、リアルを見せること。受け入れ先によっては飛び込み営業のような泥臭い業務も出てくるが、それらも意図的に見せていくことで入社後のギャップを最小限にできる。三つ目は、マネジメント層との接触。若手中堅社員との関わりは、他社のインターンシップでも多く見かけるが、マネジメント層の豊富な経験と深い見識を、スポンジのように吸収性の高い学生に当てることによって、学びを深めてほしいといった考えだ。四つ目は、5日間の一貫性。自己分析を初日と最終日に行うことで、自分の意思がキャリアを形成するのだと意識させる。
「自分の価値観、自分の特徴、強み・弱みを、どうしたら企業で活かせるだろうか。その問いに対して、5日間を通して何か一つでも可視化できたものがあれば、インターンシップとして意義があったと言えるはず。今後も学生のキャリア観醸成のために何ができるかを考え続けていきたいと思います」
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