三菱電機株式会社大賞 「技術系/実習型インターンシップ」

三菱電機株式会社

多彩なコンテンツと社員の巻き込み力
90%を超える現場が受け入れ部署に

三菱電機株式会社は、家電から宇宙まで、12の広範な事業分野を有する総合電機メーカー。三菱電機と聞くとエアコンや液晶テレビといったBtoC事業を思い浮かぶ人が多いと思われるが、それらは全体の約20%で、残りの80%はエネルギー・交通・通信など公共性の高い事業を展開している。インターンシップにおいても、普段はなかなか覗き見ることのできない「インフラとしての三菱電機」について学生の認識を深めることを目的の一つとしている。

同社は国内事業所36拠点のうち、34拠点でインターンシップを実施。社員約3,000人の協力のもと、247テーマ(部署)を設定し、学生の専攻内容や志向に合わせて受け入れを行った。専門的な実体験とフィードバックの繰り返しを経ることで、知識の幅や深さ、多面的な思考を身に付けることができる。学びとキャリアを接続させる工夫がなされており、他社の模範事例となる要素が非常に多かったことから、見事「第2回 学生が選ぶインターンシップアワード」の大賞受賞に至った。

6社の優秀賞受賞企業の中から大賞として三菱電機の社名が呼ばれた瞬間、人事部・片山敬介さんはゆっくり一呼吸置いた。そして「まさか大賞をいただけるなんて夢にも思いませんでした。弊社の取り組みは、決して斬新なものではありません。けれども20年近くインターンシップを実施してきて、毎年寄せられる学生や大学側からの声を聞き、地道に改善を続けてきました。それは今後も変わりません。これからも質の高いインターンシップを提供できるよう、一層気を引き締めてまいります」と語った。

学生の専攻や志向に合わせて
カスタマイズの受け入れを

プレゼンテーションを行ったのは、人事部採用グループの山本昌さん。今回対象を受賞した技術系の実習型インターンシップは2000年度から実施しており、2018年度には71大学・249名の学生を受け入れた。

「約20年前から、産学連携でインターンシップを実施することに重きを置いてきました。学生、キャリアセンター、教授の方々から毎年さまざまなフィードバックをいただきます。それらを精査し、日々改善を行った結果が現在のプログラムになっています。私たち人事部が行えるのは“ハード面”の整備です。一方で、有意義なインターンシップのために不可欠なのは、なかなか言語化しづらい受け入れ部署の“ソフト面”です。各社員が能動的に学生と接し、自社にとってのメリットだけでなく、広範な電機業界としての人材育成を心掛けてくれたことで、満足度が高まったのではないかと思います」

247の受け入れ部署に対し、受け入れ人数が249名。ほとんど1部署1人の受け入れということになる。学生の専攻や興味関心に合わせて、プログラムを適宜カスタマイズしながら実施する。12の事業領域すべてに参加することができ、職種についても研究開発から製造まで、メーカーでなりうるすべての職種を経験できることが同社のインターンシップの強みだ。

「テーマが具体的だということが三菱電機の特長です。例えば『AIを活用した研究開発』という抽象的な表現ではなく、受け入れ部署は三菱電機の中でもどのような役割を担っているのか、どのようなアプローチで実習を進めるのか、知識はどの程度必要なのか、といったことをかなり詳しく記載しています。学生の貴重な2週間をいただくわけなので、大学低学年から博士レベルまで、それぞれの目指す到達レベルに合ったものを提供したいと考えていました。学生自身が自分の志向に自覚的でなかったとしても、面接の中でヒアリングを行い、人事部からテーマを提案する活動も行いました」

「何ができるか」ではなく
「大切な価値観は何か」を考えさせる

インターンシップ実施時期は8月から9月にかけての10日間。しかしその後の集合研修は、2カ月置いた11月に実施される。その理由を山本さんはこのように話す。

「現場で実習を行った直後は、自分の中の棚卸や整備が未完成で消化不良を起こしている場合があります。実習後に大学に戻り、実践と学びの行き来を実感することで、その2カ月はPDCAサイクルを回すための期間でもあります」

秋の集合研修では、他エリアに参加した学生、異なる事業・職種の実習を経験した学生らとディスカッションをする機会を設けている。その中で、社会や組織から求められるニーズを再考したり、とはいえ個人のキャリアを築いていく上で絶対に譲れないものを考える「キャリアアンカー」について考えを深める機会を提供した。

「学生は『can(何ができるか)』ありきで会社選びをしてしまう傾向があります。特に技術系の場合は、専攻と就職を結びつけがちです。けれども一度『can』を置いておいて、世の中が変わっても、自分の中では変わらないであろう不動の価値観を考える。そのような形で学生のキャリア観を涵養しています」

実体験とフィードバックを繰り返し
働くイメージをクリアにしていく

学生と社員との関わり方は、トレーナー制をとっている。トレーナーには日々の業務報告や改善点、最終日には目標に対する到達度合いの数値評価してもらう。各事業所単位での講評を事前に共有し、そこから専門性に沿ってフィードバックをしていくという流れだ。最後の報告会では、コスト面や製品化に向けた障壁など、通常業務と同じような視点から学生の意見に切り込んでいく。そうすることで、大学の研究と実際の仕事との違いを実感し、働くことのイメージがクリアになっていくという。

「インターンシップを通して、さまざまな階層・年次・職種の社員と接する機会を持てるよう、機会提供を意識しています。関わる人が限定的となると、フィードバックも一面的となってしまいます。多面的なフィードバックを学生が受けられるよう、属性ごとに横串を刺すという意味でも、各事業所内での機会提供は心掛けてもらっています」

20年という長い歴史を持つ三菱電機のインターンシップ。しかしまだまだ改善点はあると山本さんは言う。例えば、開催時期や応募条件。今回の実践型の技術系インターンシップは8月後半からの2週間と決まっていた。今後はより多くの学生に就業体験の機会を提供できるよう通年で実施をしたり、決まった学校からの応募だけでなく一般公募の形で募集を行ったり、出会える可能性を広げていきたいと展望を述べた。

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