「昨年ほど、『働き方改革』を耳にした年はありませんでした」──。基調講演で登壇した伊藤さんは2017年をそう振り返った。
「しかし、一過性の流行語で終わらせるわけにはいきません。働き方改革は日本社会の大きな構造的変化と密接に関わっているからです。かつて嫌われる仕事の要素をまとめて3K(きつい、汚い、危険)と呼ぶことがありましたが、その後、新3K(きつい、帰れない、給料上がらない)を経て、今は新々3Kが疎まれる時代だそうです。皆さん何かわかりますか? それは「身体を壊す」、「結婚できない」、「心を病む」、です。働くことを怖がっている高校生や大学生がたくさんいるのです。本来もっとポジティブな「働く」ということにそんなイメージを持つ、この状況を生み出してしまったのは我々、大人の責任です」
旧来の日本型雇用システムは、以前のように機能しなくなっている。その性質の一つが職務の無限定性だ。仕事に対して明確に人がアサインされるのではなく、人に仕事が張り付いているため、できる人に仕事が集まり、長時間労働につながっている。また、年功序列や新卒一括採用、終身雇用という形態にはメリットもあったが、非正規雇用との格差や人材の流動性低下という問題の原因ともなった。さらにOJT依存の教育システムは学び直しの機会がなく、IOTによるビジネスの進化に十分対応できない。
「今、働き方改革が急がれる背景のキーワードは『人生100年時代』と『AI×データ時代』です。画像認識の技術が飛躍的に向上したAI×データの影響は、あらゆる産業・企業・職種に及んでいます。同じ社名であっても数年前とは事業が異なる企業が世の中に増え、そこから『AIに取って替わられる仕事』が話題になりました。しかし、問題の本質は『AI vs. 人間』ではありません。『AIを活用できる人間 vs. AIを活用できない人間』なのです。
また、日本の企業の平均寿命はたかだか30年と言われており、人が70歳、80歳まで現役で働く人生100年時代においては個人の就労年数の方が長く、ずっと一つの会社にいることがむしろ稀になるでしょう。
以上を踏まえた我が国の働き方改革は、まず長時間労働の規制を強化し、その上で生産性を高め、かつ労働に対するモチベーションや働くよろこびを醸成できる環境を目指します。それは業務の評価が成果とスキルによって適切に行われ、働くニーズに応じてフリーランス、テレワーク、兼業・副業など、「働き方の多様化」が進んだ環境です。ただし、働き方を選ぶにはプロフェッショナルであることが求められるでしょう。
つまり個々のスキルを上げ続けることが不可欠で、今後、企業は人材投資にこれまで以上に注力していくことになりますし、リカレント教育(生涯に渡り就労と教育を交互に行う教育)の重要性は増していきます。その中でインターンシップは、『働く』と『学ぶ』を結ぶ重要な要素となるでしょう」
「経済産業省では『人生100年時代の社会人基礎力』についてまとめました。新たに盛り込まれたのが、『何を学ぶか』『どのように学ぶか』『どう活躍するか』という3つの視点でした。この視点は何歳になっても、全世代に必要となります。
インターンシップも大学生だけのものではなく、例えば50代であっても社外の空気を吸い、異なる分野の要素を持ち帰る機会は貴重です。これまで人生は、一つのキャリアのハシゴを一段ずつ上がっていくイメージでした。しかしこれからはマルチのキャリアを持ち、つねに『自分の中に今あるもの、ないもの』をリフレクション(振り返り)しつつ、その時々で必要なスキルや資格、人脈を身に付けていくことになります。「持ち札」が多い方がいいことは言うまでもありません。
『LIFE SHIFT』の著者、リンダ・グラットンさんによれば、自分を知り、多様な人的ネットワークがあり、新しい環境に対して開かれた姿勢を保てる人は、複数のキャリアプランを実践する「変身力」が高いそうです。
成果をもとにきちんと評価が行われ、時間・場所の制約を受けない自分に合った働き方が選択できる。そのために個々人は、プロフェッショナルとしてスキルを絶え間なくアップデートしていく。これが人生100年時代の働き方です」
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