インターンシップカンファレンス最後の登壇者はアワードのプレゼンターを務めた梅崎修さんだ。第1回インターンシップカンファレンスの開催を意義あるものとし、単なる「いいね」で終わらせず来年度の「改善」を目指すためには、インターンシップ(以下IS)の実施者である企業同士や参加者である学生が知識を共有して議論する、ISの効果を検証してPDCAを回す、この2点が重要であると指摘。効果を検証するためには測定する方法が必要だ。教育プログラムの効果測定の研究者として、梅崎さんはISの効果を測るための尺度の作成のプロジェクトに着手した。
「最初のステップはIS経験に対する学生の感想をテキスト分析することでした。どのような言葉がIS経験と共に想起されるのか、カテゴリーに分類したのです。さらにカテゴリー間のつながりを分析し、最終的に4つのカテゴリーに集約しました。それが、『自己理解』『視野の拡大』『キャリアの明確化』『意欲・行動』です。この4つのカテゴリーと頻出キーワードをもとに40個の質問項目を作成し、次のステップでは学生4,000人を対象にWEB調査を実施しました。それを因子分析すると、ISには5つの効果があるという結論が導き出されたのです。以上の研究結果をもとに、現在は効果測定尺度の完成版をまとめています」
梅崎先生が導き出したISの5つの効果とは、①キャリアの焦点化 ②キャリアの展望化 ③人的ネットワークの認知 ④就労意欲 ⑤自己理解 である。
一つ目の効果であるキャリアの焦点化とは、たくさんある業界の中から自分の志望を選択していく効果を指す。これは二つ目のキャリアの展望化と一見、矛盾するように感じられるかもしれない。
「展望化というのは、例えば憧れの業界しか見えていなかった学生が、ISに参加することで他にも面白い業界があることを知り、展望が開ける効果です。焦点化と展望化は両立可能で、矛盾しないと考えます。良いISプログラムとは『焦点を絞りつつ展望が広がる』もの。どちらか一つの効果しかないとしたら、それは良いプログラムとは言えないでしょう」
三つ目は人的ネットワークの認知で、これは人脈とは当たり前に「ある」のではなく、自分で「作る」のだと認識すること。苦手な人であっても仕事上のネットワークに不可欠ということはある。好きでなくとも上手く付き合っていけるような、仕事における人間関係の操作性を認識することもISの効果なのだ。
四つ目の就労意欲は、就労体験を通して働くイメージができ、未知の社会に出る意欲がかきたてられるというもの。五つ目の自己理解には、自分の特徴を理解するだけでなく、他人と比較して自分を位置づける意味も含まれる。
今回のアワードを受賞した企業には、上記の5つの効果に即した共通点がある、と梅崎さんは言う。
「どの企業も学習過程をひじょうに丁寧に、手間暇かけて作り込んでいます。三井住友海上火災保険は顕著な例ですね。それから未知への意欲を高める工夫はボッシュが目立っていましたが、これは就労意欲を促す効果につながります。富士通の、多様だけれども強度のある体験学習は、広げつつ絞るための様々な工夫の好例です。自己理解は他者や市場との関係を通して醸成されますが、クラウン・パッケージの学習環境はいいですね。人的ネットワークの認知には、地域、大学、業界を巻き込んだ栄水化学が光ります」
またISには振り返り(内省)の機会やサポート人材が必須であるが、フィードバックについては全受賞企業が、学生からの高い評価を得ていた。
「今回、選考していて、あと少しの改善で効果を上げられるプログラムが多いと感じました。もう少し時間と手間をかけて工夫をしていたら、と惜しまれるのです。事前にIS効果測定を実施し、IS経験後の結果と比較することが改善点の洗い出しに役立つのではないかと思います。就職活動結果との関係を分析したり、効果の高いプログラムを共有し、議論をしたり、こうしたカンファレンスの機会をIS議論のアリーナにしたいというのが私の未来の野望です。なぜなら、ISの議論は日本経済を元気にするからです。来年はぜひ、改善に向けて議論をしましょう!」
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