
医療と教育を柱に、3学部5学科からなる神戸常盤大学。看護・医療技術・教育の各分野において、実践力と専門性を兼ね備えた人材の育成に力を注いでいる。現場連携型のカリキュラムを通して、地域の医療機関や教育現場と密接に関わりながら、学びを実践へとつなげる教育体制を構築しているのが特徴だ。今回受賞した「STEP Project ― 未来の先生を育てる『初年次協働型』キャリアデザインプログラム ―」も、そうした取り組みのひとつと言える。
教育学部の田中講師によると、「STEP Project」立ち上げの出発点には、低学年特有の課題があったという。それは、自分の将来像を抽象的にしか描けないということ。1年生の約70%が「自分が先生に向いているのかわからない」「現場を知らないまま進路を決めるのが不安」「採用試験を突破できるか自信がない」といった迷いを抱えていたのだ。
「低学年の段階で抱える悩みとしては、ごく自然なものだと言えるでしょう。そこで、『知らないことへの不安』を『知ることの喜び』へと転換できるような機会を提供することで、その不安を解消できると考えました。『なぜだろう』『もっと知りたい』という学生自身の気持ちをつなぐことで、主体的な学びのエンジンにしていくことを重視。また、単発のイベントではなく、初年次から段階的に実践する協働型プログラムとして構成することで、学びの継続性と定着を高めています」
「STEP Project」の対象は、保育士、幼稚園教諭、小学校教諭、中学校理科教諭、養護教諭などを目指す学生である。低学年生が抱えがちな将来像の曖昧さや自信のなさを前提に、長期・体系的かつ伴走型でキャリア形成を支援している点が評価された。また、自己理解ツールやポートフォリオを活用し、成果ではなくプロセスを重視する設計により、初年次から学びと将来を結びつけた行動変容を促している点も評価ポイントとなった。

「STEP Project」では、1年次の教育科目「まなぶる>ときわびと」を起点に、チームビルディングや自己表現力、協働力を育み、専門的な学びの土台を築く。その後は、大学附属の子育て支援施設や地域の幼稚園・保育所・小中学校での実習を通して、知識と実践を結びつけていき、さらに学生主体の自主学習チームへと発展させていく。
「学びの広がり・深さ・継続性を生み出すために、『STEP Project』は三層構造で設計されています。1つ目は全体活動で、キャリアの言語化、自己理解、ポートフォリオ化を行います。2つ目はコース別活動で、進路ごとに学びながら成果を共有。3つ目はチーム活動で、少人数で継続的に学びを深め、教員が適切に支援します。低学年のキャリア支援においては、続けられる仕組みこそが重要であり、この三層構造により学びを一過性で終わらせず、継続的な成長につなげているのです」
「STEP Project」の特徴は、一般的な教員採用試験向け学習会との違いに表れている。通常の学習会は教員が中心となって運営し、カリキュラムも画一的で、振り返りは個人に委ねられがちだ。一方で、「STEP Project」は学生が運営主体となり、活動内容も学生の状況や関心に応じて柔軟に設計されている。
「重視したのは、授業と課外、個人とチーム、学内と地域をつなぎながら、学生が“自分の学びを自分で動かす”状態をつくること。教員は教える立場ではなく、“伴走するファシリテーター”として関わる点が大きな特徴です。さらに、チームビルディングや振り返り、分かち合いを重視し、大学附属の子育て支援施設を活用することで、乳幼児から小学生、保護者までと関わる機会も提供。また、授業と接続した単位認定も行い、学習とキャリア形成の両立を図っています」
学びの継続性と定着を図るために三層構造で設計された「STEP Project」は、各フェーズに工夫が施されている。全体活動では、マイナビの「適性診断MATCH plus」で自己理解を深め、続いて独自のキャリアパスポート「STEP Passport」において、教員・保育者を志す理由を言語化。そこで作成するポートフォリオは、経験を整理して学びの意味を可視化する役割を果たし、記録・振り返り・言語化を通して「何を学んだのか」「何ができるようになったのか」をキャリア形成へと結びつけている。また、コース別活動は同じ進路を目指す学生同士が学び合い、活動内容や成果を共有する場として位置づけられている。他チームの工夫や実践から刺激を受けることで、自分たちの取り組みにとどまらず、視野を広げながら専門性を深めていける点が特徴である。
「三層目のチーム活動は、『STEP Project』で最も学生の主体性が発揮される領域で、継続的な学びを支える日常的な実践の場です。少人数チームでSNSを活用して学習状況を共有し、小さな取り組みを可視化することで停滞を防ぎ、学習を継続しやすい体制を構築。また、教員も参加し、必要に応じて声をかけることで学生のモチベーションを引き出しています。『続けられること』を支える仕組みこそ、この活動の大きな強みだと言えるでしょう」
また、「STEP Project」では学生の成長を支えるために、3つの方法でフィードバックを行っている。ポートフォリオ記録では、教員がメッセージを書き込みながら学生の学びを後押しし、メンター面談では個別の目標設定と振り返りを通して専門的な助言を行う。さらに、SNSによる伴走支援で日常的な質問対応や声がけを行い、安心感と継続意欲を支えている。
「低学年にとって重要なのは、『評価されること』以上に『見てもらえている』『支えられている』という実感です。丁寧なフィードバックが、主体性とモチベーションの向上につながっていると言えるでしょう。きめ細かな支援の成果は、学生たちの声にもよく表れています。『漠然と先生になりたい』から『さまざまなことを知った上で、やはり先生になりたい』へと気持ちが変化したという学生がいました。また、『SNSでの報告やポートフォリオでの振り返りが、採用試験に向けた学習のモチベーションにつながった』という声も。さらに、『子どもと接するなかで、教職のやりがいを実感できた』という声も届いています。加えて、昨年は公立幼稚園・保育所・小学校教諭の合格率が100%を達成。この事実は、『STEP Project』が学生の成長を確かな成果へと結びつけていることを裏づけていると言えます」

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