久留米工業大学 受賞レポート

インターンシップの枠を超えた取り組み!
日本最大規模を誇る学生建築プロジェクト

久留米工業大学は、福岡県のほぼ真ん中に位置する工学部6学科、大学院3専攻を擁する工業大学。1958年に学校法人久留米工業学園として設立認可され、1976年に大学が誕生した。学生数は約1,300名と小規模校ながら、建築と設備を総合的に学べる建築・設備工学科というユニークな学科があるのが特徴だ。

建築・設備工学科では、大学の授業とは別に「ASURA」という独自の建築プロジェクトを展開している。単なる就業体験ではなく、学生の興味や地域の課題、社会ニーズに基づき、企業や自治体などと連携しながら進めていく超実践型のプロジェクト。企業や地域の課題を解決し、学生も多くの学びを得られる産官学連携の成功事例として、地方創生賞の受賞につながった。「ASURA」を立ち上げ、進化させてきたのが、建築・設備工学科の准教授・成田聖さんだ。

「『ASURA』は、いわゆるインターンシップのプログラムではありません。簡単に言えば、建築サークルのようなもので、大学1年生から参加できます。2017年に私が個人的に立ち上げ、2018年に建築(Architecture)・空間(Space)・極限(Ultimate)・再設計(Redesign)・美学(Artistic)の頭文字を取り、“阿修羅”という戦いの神の名を冠する『ASURA』と命名。以来、学生たちがやりたいことをベースに、多彩なプロジェクトを展開しています」

「川の駅」の再生から「阿修羅喫茶」の立ち上げ、公共施設でのナイトプールの開催、空き家物件のリノベーションまで、現在8つのプロジェクトが進行中。新入生に向けて毎年4月にプロジェクトのオリエンテーションを開催していることもあり、1年生の参加率は3~4割にのぼる。「ASURA」は建築・設備工学科の人気プロジェクトであると同時に、日本最大規模の学生建築プロジェクトへと大きく成長を遂げた。

学生主体で、実際のビジネスと同じプロセスを経験!あえて学生への配慮やサポートを排除

一般的なインターンシップと「ASURA」の大きな違いは、大学や企業などが敷いたレールに乗るのではなく、自らが主体的にレールを敷いていく点。やりたいことをビジネスに落とし込むところからスタートし、基本構想や計画を立て、関係先との事前交渉や予算の獲得などを、学生主導で行っていくという。プロジェクトが始動すると、課題をキャッチアップし、解決するという作業が無限に発生する。そして、学業と違って正解がないなかで答えを導き出し、プロジェクトを成功へと導いていかなければならない。

「『ASURA』のプロジェクトは、実際のビジネスとまったく同じプロセスをたどります。しかも、大学運営側から『学生に寄り添う』『学生のために配慮する』ということはいっさいしていません。その理由は、周囲のサポートやフォローがなくても自分で戦い抜ける、“阿修羅”のような強さを身につけてほしいと考えているからです」

久留米市にある「筑後 川の駅 しばかり」の地域活性化プロジェクトは、2年がかりの大規模な取り組みだ。生鮮野菜などの販売やイベントの開催を行うと同時に、地域のコミュニケーションの場として機能していたものの、少子高齢化や人手不足、コロナ禍の影響で来場者数が減少し、売上の落ち込みが深刻化。そこで、2年前に「ASURA」のメンバーが立ち上がり、地域活性化のコア施設へと生まれ変わらせるプロジェクトをスタートさせた。

「施設を改装するにあたって、DIY系人気YouTuberとのコラボレーションを実現しました。予算の獲得においては、自治体に補助金や助成金の申請を行って調達。そのほか、ブランディング活動やイベント開催なども、すべて学生が主体となって進めています。新しいことに挑戦する際は、誰もが壁にぶつかりますし、失敗もするでしょう。けれども、私たちが大切にしているのは、絶対に妥協しないこと。学生は自分たちの限界に挑戦しながら、常に“今以上”を目指し続けています」

自分で考え、行動し、結果を出す、という経験こそが学生にとっての成長の近道

「ASURA」の一番の特徴は、あらかじめ用意されたプロジェクトに挑むのではなく、学生たちが主役となってゼロから地域の課題解決や社会のニーズに応えるビジネスを創出していくところ。リアルな現場の第一線で社会人さながらの活動をするという、かけがえのない経験ができる。

「プロジェクトに参加することで、早い段階で社会を知れるのが大きなメリットです。また、実際のビジネスに携わるなかで、自分の力不足を痛感するシーンも多いはず。そういったときにこそ、学校でしっかり学ぶことの重要性が実感できるのです。また、プロジェクトを通して自分の適性がわかるのもポイント。『建築の仕事をするなら、デザインに携わりたい』という学生がたくさんいます。けれども、実際にやってみることで向き不向きがわかる。また、プロジェクトにはデザイン以外にもさまざまな業務があり、いろいろな経験のなかから意外な適性や楽しさを発見できるでしょう」

成田さんによると、成長のためには自分で考え、行動し、結果を出す、という経験が大事だとか。逆に、「失敗を恐れる」「変化を嫌がる」「社会に委ねる」「未来に投げる」「問題に対して他人事」という姿勢は、成長の芽を摘み取ってしまうという。

「特に地方創生に挑む際には、そのような考え方は大きなマイナスになるでしょう。目の前の課題を自分事として捉え、失敗を恐れることなく、既成概念に縛られない柔軟な発想でトライ&エラーを繰り返していくことが、成長の近道だと思っています」

今回の地方創生賞の受賞を通して、喜びと同時に「これほどのプログラムでも大賞を獲れないのか」と感じたという成田さん。何度負けても立ち上がって戦いに挑んでいく“阿修羅”のように、「ASURA」をさらにバージョンアップさせ、今後もキャリアデザインアワードに挑み続けるという。地方創生と学生の成長を同時に加速させる「ASURA」には、まだまだ無限の伸びしろがある。

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